中国人観光客が青森を選ぶ理由 訪日自粛下でもリピーターが訪れる現場
中国人観光客が青森を選ぶ理由 訪日自粛下でもリピーター

中国政府による訪日自粛の呼びかけが続く中、青森県には中国人観光客が訪れている。本州最北端に位置し、中国からの直行便がない地域にもかかわらず、リピーターを中心に根強い人気を保っている。2026年春節シーズン(2月)には、青森県を訪れて宿泊した中国人観光客は2万590人に上り、県内インバウンド全体の約3割を占めた。これは全国平均の14%を大きく上回る数字だ。

個人旅行客を狙う青森県の戦略

青森県国際誘客交流課の稲田勲課長は、「ターゲットを個人旅行客に定めている」と説明する。団体客ではなく、自分で情報収集し、旅行計画を立てられるリピーター層に焦点を当てた結果、訪日自粛下でも一定の集客を維持できているという。

6月上旬の夜、JR青森駅前のアーケード街では、上海から訪れた44歳の男性がアイスクリームを片手に休憩していた。男性は青森市内でリンゴ関連の土産物店や観光スポットを巡り、次の目的地は十和田市の奥入瀬渓流沿いのホテルだという。これらのスポットはすべて、中国版インスタグラム「小紅書(レッドノート)」で知り、宿泊先は旅行会社やオンラインエージェントを通さず、ホテルの公式サイトから直接予約したと話す。男性の訪日経験は10回を超える。

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奥入瀬渓流に集まるリピーター

奥入瀬渓流では、2026年に入ってからも中国人観光客の姿が見られる。ネイチャーガイドを務める中国語通訳案内士の中村あずみさん(50)によると、同渓流を訪れる中国人観光客の大半は、訪日経験が3、4回以上のリピーターだ。「(訪日自粛で)ビザを取りづらくなったという声は聞く。でも、ぱたりと来なくなったわけではない。自分で調べて旅行計画を立てられる、慣れた人が来ている印象です」と語る。

訪日自粛の影響と個人旅行の強み

中国政府は2024年以降、日本への団体旅行を制限し、個人旅行に対してもビザ発給を厳格化している。しかし、青森県のように個人旅行客に特化した地域では、影響が比較的軽微にとどまっている。観光庁の統計によれば、2026年2月の青森県の中国人宿泊者数は、前年同月比で微減にとどまり、全国平均の減少率を下回った。

上海からの男性は、高市早苗首相の台湾有事をめぐる国会答弁について「日本政府には考えを改めてほしい」と述べつつ、「今回の旅行は別問題」と話し、政治と観光を切り分ける姿勢を示した。このようなリピーターは、SNSや口コミで情報を得て、自ら旅程を組むため、政治的な緊張の影響を受けにくいとされる。

青森の観光資源と中国人客のニーズ

青森県は、リンゴや奥入瀬渓流などの自然景観に加え、ねぶた祭などの文化イベントが中国人観光客に人気だ。特に「小紅書」では、フォトスポット「あおもりびっくりんご」(割れ目の中に入って記念撮影できるオブジェ)が話題になり、中国人観光客が訪れるきっかけとなっている。こうした口コミ効果が、個人旅行客の誘致に寄与している。

観光業界全体では、インバウンドが自動車に次ぐ輸出品目に成長する一方、オーバーツーリズムや日中関係の悪化が課題となっている。青森県の事例は、個人旅行客をターゲットにした戦略が、政治的なリスクを緩和し、持続可能な観光につながる可能性を示している。

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