外務省は、東南アジアの海上交通路(シーレーン)上でチョークポイント(急所)と呼ばれる要衝の海図整備に乗り出す。周辺国と協力して五つの海域で高い精度の海図を作成し、日本経済を支える海上輸送の安全確保につなげる考えだ。ホルムズ海峡の事実上の封鎖を教訓に、東南アジアで平時から海上交通路の多角化を図る。
対象海域と費用
対象海域は、インドネシア東部のモルッカ海峡、オンバイ海峡、同西部のスンダ海峡、フィリピンのスリガオ海峡、同南部のバラバック海峡の各100平方キロメートル。水路の測量や海底の調査を実施し、航路標識も整備する。作成した海図は、海峡に接する国などによる公開が想定されている。
費用は一つの海峡あたり4億円で、計20億円を見込む。フィリピン、インドネシア、東ティモールへの政府開発援助(ODA)の無償資金協力で行う予定で、来年度当初予算に関連経費を盛り込む方針だ。
代替航路の確保が狙い
海図作成の主な狙いは、代替航路の確保にある。外務省によると、インド洋と太平洋を結ぶ最短航路の「マラッカ・シンガポール海峡」は、中東から日本に原油などを運ぶタンカーの8割以上が通過する。有事などで通航不能になれば、スンダ海峡からスリガオ海峡を通る「フィリピンルート」と、さらに南側の豪州からモルッカ海峡などインドネシア群島を北に抜ける「インドネシアルート」が代替航路となる。
マラッカ・シンガポール海峡は1960年代から日本が協力して高精度の海図を整えてきた。代替航路でも近年、インドネシアなどによる測量が進むものの、精度が低く、小島や浅瀬、暗礁が多いため、民間企業などから海図の整備を求める声が上がっている。
周辺国との協力強化
周辺国の海洋秩序の保全に貢献する狙いもある。精度の高い海図は、違法漁業対策や災害時の補給路確保などに活用でき、関係国にも利点が大きいという。高市首相は「自由で開かれたインド太平洋(FOIP)」の進化版で「安全保障分野におけるODA」の活用を掲げており、支援拡充を通じて関係を強化する。



