習近平総書記の訪問先で青空が広がる現象
中国の政治指導者が訪問する地域では、訪問前に大気汚染が改善し、青空が広がる現象が報告されている。この現象は「形象工程」と呼ばれ、見栄えを整えるために大気汚染を一時的に抑制する取り組みの一環とされる。東京大学社会科学研究所准教授の伊藤亜聖氏は、「オリンピック・ブルーやAPECブルーなど、国際イベントのたびに空気の『形象工程』が行われてきた」と指摘する。
経済学の手法で解明された「青空のカラクリ」
ジャーナリストの高口康太氏と伊藤亜聖氏は、国際学術雑誌に掲載された論文をもとに、この現象を解説。論文では、習近平総書記の訪問前に大気汚染が改善することを統計的に確認。さらに、訪問先の企業の株価が上昇する傾向も明らかにされた。高口氏は「総書記の視察は経済的影響も大きく、株価上昇パワーで権力を測ることもできる」と述べる。
北京の大気汚染改善の実態
北京の大気汚染は近年改善傾向にある。2013年の青空指数(AQI100以下)の日数は176日だったが、2025年には311日と倍近くに増加。しかし、重大イベント時にはさらなる対策が取られ、最高の青空を演出するために大気汚染がコントロールされる。高口氏は「昔の北京は『ロード・オブ・ザ・リング』の影の国モルドール並みに暗かったが、最近は見違えるようにきれいになった」と振り返る。
「形象工程」の歴史と広がり
「形象工程」は、実質的な意味がなく見栄えを整えるために大金を注ぎ込む中国独特の概念。政府庁舎やスタジアムの建設、国際イベントや首脳視察に合わせた街並みの整備などが含まれる。毛沢東時代には稲穂を集めて「大豊作」を演出した例もある。伊藤氏は「大気汚染の改善もその一環で、訪問前に20日前から対策が始まることもある」と説明する。
株価上昇との関連性
論文では、習総書記の訪問が地域経済に与える影響も分析。訪問先の企業の株価が有意に上昇することが示され、政治指導者の権力が市場に直接影響を与える実態が浮き彫りになった。高口氏は「中国経済を理解する上で、こうした政治的な要素を無視できない」と強調する。



