インド富裕層の海外移住ブーム、背景に何が?前首相側近ジャーナリストが解説
インド富裕層の海外移住ブーム、背景に何が?

インド人富裕層の間で海外移住ブームが起きている。毎年20万人以上のインド人が市民権を放棄し、2023年までの13年間で合計188万人が国籍を手放した。国連推計によれば、インドからの国外移住者総数は1853万人余りと、世界最大規模だ。

この現象を深掘りした書籍『Secession of the Successful: The Flight Out of New India』の著者で、マンモハン・シン前首相の側近を務めたジャーナリストのサンジャヤ・バル氏が、ニューデリーでその背景を語った。

資産48億円以上が2万人近く

バル氏によると、インドの富裕層は資産規模で見ても顕著だ。48億円以上の資産を持つ富裕層は約2万人に上り、その多くが海外移住を検討しているという。移住先として人気なのは、米国、英国、カナダ、オーストラリアなど英語圏が中心だが、近年はシンガポールやUAEなどアジア・中東も増えている。

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「成功者の離脱」と題された同書は、印僑(インド系移民)の歴史的広がりを概説しつつ、近年の移住ブームが単なる経済的な理由だけでなく、教育や医療、生活の質、ビジネス環境の良さなど多岐にわたる要因によるものだと指摘する。

一部で生じ始めた摩擦

バル氏は「インド経済は成長しているが、富裕層は国内のインフラや行政サービスに不満を感じている。また、子どもたちの教育や将来のキャリアのために海外に出るケースが多い」と説明する。さらに、インド国内での政治的不確実性や規制の複雑さも移住を後押ししているという。

ただし、こうした動きは国内で摩擦も生んでいる。富裕層の国外流出は、税収減少や頭脳流出につながるとの懸念がある。一方で、海外に移住した印僑は本国への送金や投資を通じて経済に貢献している面もあり、単純に否定的に見ることはできないとバル氏は指摘する。

中国人富裕層の動きと共通点

本書は、中国でも同様の富裕層流出が起きていることにも触れている。筆者も昨年刊行した『潤日』で中国人富裕層の日本への脱出を描いたが、インドでも同じような現象が起きていることに驚いたという。両国ともに経済発展に伴い富裕層が増えたが、国内の制約や不透明感から海外に活路を求める傾向があるようだ。

バル氏は「インド政府は富裕層の流出を食い止めるために、ビジネス環境の改善や税制の簡素化など、抜本的な改革が必要だ」と強調する。しかし、現在の政治状況では具体的な対策は進んでおらず、当面は移住ブームが続くと予想される。

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