中国の特色ある「ヤバい経済学」:習近平訪問で大気汚染が20日前から改善?
習近平訪問で大気汚染が20日前から改善?

中国の政治指導者が訪問する都市では、訪問の20日前から大気汚染が改善され、青空が現れる現象が経済学の手法で解明された。この「形象工程」と呼ばれる見栄え優先の施策は、習近平総書記の権力の大きさを株価変動から測定する研究とも関連している。

「影の国」並みの大気汚染

中国は長年、深刻な大気汚染に悩まされてきた。2000年代末から2010年代前半にかけては、北京の大気は映画『ロード・オブ・ザ・リング』に登場する冥王サウロンが支配する影の国モルドールのように暗い日が多かったと、ジャーナリストの高口康太氏は指摘する。しかし近年、北京の青空指数(AQI100以下)の日数は2013年の176日から2025年には311日へと倍近く増加している。

東京大学社会科学研究所准教授の伊藤亜聖氏は、「大気汚染の改善は徐々に進んでいるが、重大イベントの際にはさらに徹底した対策が必要」と語る。国際イベントでは「オリンピック・ブルー」や「APECブルー」と呼ばれる現象が起こり、空気の「形象工程」が実施されてきた。

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秘密の訪問先で20日前から青空に

中国の政治指導者が訪問する地域では、訪問の20日前から大気汚染が改善されることが、経済学の論文で明らかにされた。この現象は、訪問予定が機密扱いであっても発生するという。論文は、工場の操業停止や交通規制などの対策が事前に実施されていることを示唆している。

高口氏は「総書記が視察するところ、必ず青空になる」と述べ、この「神通力」の背景には徹底した環境対策があると解説する。伊藤氏は「毛沢東時代には稲穂を集めて『大豊作』を演出した例もある。現代では大気汚染をコントロールする形象工程が行われている」と指摘する。

株価上昇パワーで測る習近平総書記の権力

習近平総書記の権力の大きさは、訪問先の株価変動からも測定できる。研究によれば、習氏が訪問した企業の株価は訪問後に有意に上昇する傾向がある。これは、総書記の訪問が企業に対する政府の支援を示すシグナルとして市場に解釈されるためだ。

この現象は、中国の政治体制における指導者の影響力の大きさを如実に示している。高口氏は「中国経済の深層には、政治と経済が密接に結びついた独特のメカニズムが存在する」と分析する。

形象工程の歴史と実態

「形象工程」という中国語は、実質的な意味は乏しいが見栄えを整えるために大金を投じることを指す。豪華な政府庁舎やスタジアム建設に加え、国際イベントや首脳の視察に合わせて街並みを整備することも含まれる。

日本でも天皇陛下が出席する国民スポーツ大会に合わせて競技施設や道路を補修することはあるが、中国の場合は大気汚染までコントロールする点が異例だ。伊藤氏は「最高の青空の下で最高の写真を撮り、イベントの大成功をアピールする必要がある」と説明する。

今後の展望

大気汚染の改善は中国の環境政策の成果として評価される一方、その背後にある政治的な動機は複雑だ。高口氏は「中国の特色あるヤバい経済学」として、こうした現象を経済学の手法で分析することの重要性を強調する。今後の研究では、訪問前後の大気汚染データと経済指標の相関関係がさらに詳細に解明されることが期待される。

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