忙しくてまとまった時間が取れない、疲れて目も手も動かしたくない状態でも、耳はまだ自由に使える。明治大学教授の堀田秀吾氏は、著書『疲れ切った人のための勉強法』(東洋経済新報社)の中で、耳から入る情報だけで学習できる方法を提案している。
「読む」と「聞く」の理解度に有意差なし
ペンシルバニア・ブルームズバーグ大学のロゴウスキーらの研究では、大学生を対象にノンフィクション書籍の序文と1章分を「電子書籍で読む」「オーディオブックで聴く」「読みながら同時に聴く」の3グループに分け、同じ理解テストを実施。直後と2週間後の成績を比較したところ、どの時点でも3グループ間に統計的な有意差は見られなかった。つまり、きちんと聴けば読むのと同じ程度に内容を理解できることが示された。
堀田氏は「ラジオのトーク番組やポッドキャストを聴いていて、細かいところまで覚えている経験があるはず。道順やレシピを耳だけで聴いても再現できる。ロゴウスキーらの研究はそうした感覚を学術的に確認したものだ」と説明する。
4000人超のデータ分析で裏付け
ノースダコタ大学のクリントン=リセルは、読む場合と聴く場合の理解度に関する46件の研究、合計4000人以上のデータを分析。その結果、読む方がわずかに有利な程度で、ほとんど差がないことが分かった。特に、読む条件と聴く条件がどちらも研究者のペースで進む場合、差はほぼ消える。
堀田氏は「自分のペースでインプットできるかどうかが重要。ながら聞きでも学習効率は落ちない」と指摘。体力がない日には「耳だけモード」で学習することを勧めている。
運転と学習の両立も可能
脳は複数のタスクを同時に処理できる能力を持ち、特に慣れた行動と組み合わせることで学習効率が維持される。堀田氏は「考えなくてもできる行動、例えば通勤や家事、運転などと組み合わせることで、頭の中の余白を活用できる」と述べている。
毎日の小さな積み重ねが大きな差を生む。疲れ切った状態でも、耳を使った学習法を取り入れることで、無理なく知識を増やすことができる。



