iPS細胞の個人向け保管サービスが拡大、製造コスト競争も激化
iPS細胞の個人向け保管サービス拡大、製造コスト競争も激化

医療系スタートアップ(新興企業)などが、様々な臓器や組織の細胞に変化できる「iPS細胞」を製造・保管する個人向けサービスに乗り出している。将来、iPS細胞を使った再生医療が普及した際、治療に活用することを見込む。iPS細胞由来の製品の実用化が決まり、再生医療の普及拡大に向けた機運が高まる中、iPS細胞の製造コストの圧縮を目指した研究開発も活発化している。

個人向け保管サービスの広がり

再生医療には一般的に、自分の細胞を利用する「自家移植」と、他人の細胞を使う「他家移植」がある。他家移植は細胞の大量生産が可能で、製造コストが安い。だが、移植後に免疫システムが拒絶反応を引き起こす恐れがある。健康な時にiPS細胞をオーダーメイドで製造し、保管しておけば、病気の治療が必要になった時に速やかに自家移植が受けられ、リスク軽減につながるとされる。

企業では、iPS細胞を使った自家移植の将来的な普及を期待した事業化の動きが広がる。米国に本社を置く新興企業「I Peace(アイ・ピース)」は、血液からiPS細胞を製造・保管する事業を展開している。同社は、iPS細胞の開発者の山中伸弥・京都大教授と共に研究した田辺剛士CEO(最高経営責任者)が、2015年に起業。27年には子会社がある京都市で、年数千人規模のiPS細胞の生産能力を持つ製造拠点を新設する計画だ。

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企業の期待と課題

田辺氏は「iPS細胞は次世代医療産業にとって、(工業製品に不可欠な)半導体のような存在になる。日本を発明国から、iPS細胞の供給拠点にしていく必要がある」と強調する。また、東証グロース上場の「リプロセル」(横浜市)は尿からiPS細胞を製造し、日米の拠点で保管するサービスを行っている。製造費は税込み187万円で、10年分の保管料(99万~132万円)が別途かかる。横山周史社長は「拒絶反応を起こさずに再生医療を受けられれば、患者のメリットは大きい。爆発的に成長する可能性がある事業だ」と期待する。

ただ、iPS細胞を活用したサービスをより多くの人が利用できるようにするには、製造・保管コストの縮減が必要になる。パナソニックホールディングス(HD)は、患者自身の血液から自動でiPS細胞を作製できる装置の研究開発を進めている。これまで熟練者の手作業が多かった製造工程の機械化を目指したもので、28年度の実用化が目標だ。装置に血液成分を入れると自動で試薬を加え、2~3週間程度でiPS細胞ができるという。

iPS細胞を巡っては、米国や日本、中国などでiPS細胞から作製した細胞を人に投与するなどの臨床計画が進む。iPS細胞を使った再生医療の本格普及を見据え、製造を巡る開発競争が激しくなりそうだ。

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