リニア中央新幹線トンネル工事で水源枯渇、JR東海「回復の有効手段ない」と認める
リニア工事で水源枯渇 JR東海「回復手段ない」

2026年6月下旬、ダブル台風が列島を襲った大雨の2日後、岐阜県東部の瑞浪市大湫町にある「天王様の井戸」は底が干上がったままだった。地元で生まれ育った元コメ農家の長谷川達二さん(81)は「何百年も水が枯れたことがなかったのに……。水の通り道が変わってしまった」と憤る。

異変は2024年2月に発生

異変が起きたのは2024年2月。5カ所ある共同水源の一つが枯渇し、周囲の井戸やため池も次々と枯れていった。天王様の井戸の水がなくなったのもその頃だ。原因とみられているのが、地下150メートルで進むリニア中央新幹線のトンネル工事だった。

集落から数百メートル西まで掘り進めたところ、毎秒約20リットルの水がトンネル内に湧き出した。JR東海は後に県に提出した報告書で「トンネル掘削により盆地内の地下水を引き込むこととなった」と推定した。

Pickt横長バナー — Telegram用の共同買い物リストアプリ

JR東海の対応と地盤沈下

JR東海は住民への説明に回り、代替の水源を確保するなどの対応に追われた。ただその間も「地盤が安定するところまで」とトンネルを掘り続け、県や市の中止要請を受けてようやく工事を止めたのは、水が出てから3カ月後だった。地下水位が下がった影響で、一帯では地盤沈下が進む。15センチ沈んだ地点もあり、JR東海は最大24センチの沈下が数年単位で続くと見込む。

長谷川さんは「トンネルを掘るなとは言わない。元通りにしてほしいだけ。そうじゃないと安心できない」と話す。だがJR東海の丹羽俊介社長は7月15日の記者会見で、この地下水位低下の回復方法について「有効な手段は見つかっていない」と述べ、元通りにはできないことを認めている。

工事と環境の課題は水だけではない

工事と環境をめぐる問題は、水だけではない。東京側の始発駅となる品川駅では、大深度地下工事に伴う騒音や振動への懸念が指摘されている。また、南アルプスを貫くトンネルでは、大量の土砂の排出や生態系への影響が課題となっている。JR東海は環境影響評価書に基づき対策を進めるとしているが、住民の不安は拭えない。

リニア中央新幹線は東京―名古屋間を約40分で結ぶ計画で、2027年の開業を目指していたが、静岡工区の着工遅れなどから目標は撤回され、現在は開業時期が未定となっている。2026年7月、静岡県がようやく着工を容認したものの、環境問題への対応が今後のスケジュールに影響を与える可能性がある。

Pickt記事後バナー — 家族イラスト付きの共同買い物リストアプリ