回転寿司チェーン「スシロー」を運営するあきんどスシローの中国事業が、見事な復活を遂げている。かつては現地の競合やフードロス問題に苦しんだが、改革を断行。2024年には過去最高の売上高を記録した。その背景には、中国市場に適応した戦略と、現地トップのリーダーシップがあった。
苦境からの脱却、V字回復の軌跡
スシローは2019年に中国1号店を上海にオープン。しかし、直後にコロナ禍が直撃し、客足は大きく減少。さらに、中国の回転寿司市場は競争が激化し、低価格帯のローカルチェーンが台頭。スシローは「高すぎる」と敬遠され、業績は低迷した。
転機は2022年。中国法人のトップに就任した玉塚元一氏(現・あきんどスシロー会長)が、抜本的な改革に着手。価格体系の見直しやメニューの現地化、オペレーションの効率化を推進した。特に、寿司ネタの仕入れを現地産に切り替え、コスト削減と鮮度向上を両立。さらに、日本の「回転寿司」の概念を覆す、注文後に一貫ずつ握る「ハンドメイド方式」を導入し、品質の差別化を図った。
これらの改革が実を結び、2024年の中国事業の売上高は前年比で約1.5倍に拡大。店舗数も30店舗を超え、今後も年間10店舗以上のペースで出店を続ける計画だ。
中国市場に合わせた戦略転換
中国事業の復活を語る上で欠かせないのが、価格戦略の変更だ。当初、スシローは日本と同様の「一皿100円(税抜き)」を基本としていたが、中国では「100円=約5元」が高額に映り、客単価が伸び悩んだ。そこで、ランチタイムには「88元(約1800円)食べ放題」を導入。ディナータイムも「一皿12元(約250円)から」と価格を抑え、幅広い客層を取り込んだ。
また、メニューも現地の嗜好に合わせて改良。中国で人気のエビやサーモンを使った寿司を充実させたほか、火を通したネタやスープ、デザートなども提供。日本の「生もの」に抵抗がある客にも配慮した。
玉塚氏は「中国の消費者は、品質と価格のバランスに非常に敏感。われわれは『高品質なのに手頃』というポジションを確立した」と語る。
デジタル活用とサプライチェーン改革
スシローの中国事業を支えるもう一つの柱が、デジタル技術の活用だ。全店舗にタブレット端末を導入し、注文を完全デジタル化。客はスマートフォンからも注文でき、待ち時間を短縮した。さらに、AIを活用した需要予測システムを導入し、フードロスを大幅に削減。かつては廃棄率が15%に達していたが、現在は5%未満に抑えられている。
サプライチェーンも見直した。中国国内に冷蔵倉庫を整備し、各店舗への配送を効率化。これにより、生鮮品の品質を保ちながら、コストを削減することに成功した。
玉塚氏は「中国の外食市場は、デジタル化が進んでいる。われわれもそれに追いつく必要があった」と振り返る。
今後の展望と課題
スシローは中国市場での復活を果たしたが、課題も残る。競合の動きは活発で、同業他社も低価格戦略を強化。また、中国経済の減速懸念もあり、消費者心理の変化が業績に影響を与える可能性がある。
それでも、スシローは中国事業に自信を見せる。玉塚氏は「中国市場はまだまだ成長余地がある。われわれは、『スシロー=おいしくて手頃』というブランドを浸透させ、さらなる拡大を目指す」と意気込む。
スシローの中国復活劇は、日本企業が海外市場で成功するためのヒントに満ちている。現地化と品質の両立、デジタル活用、そしてリーダーシップ。これらの要素が組み合わさったとき、苦境を逆転する力が生まれるのだ。



