SBIホールディングスの北尾吉孝会長は、Web3カンファレンス「WebX 2026」の登壇で「孫さんはOpenAIだが、私はAnthropic。私の評価はずっと上だ」と述べ、会場の熱気を高めた。同社は6月、米Anthropicと生成AIプラットフォーム「Claude」を活用した全社的なAIトランスフォーメーション(AX)の推進で合意したと発表。システム開発や顧客対応、データ分析、業務支援まで幅広い業務を対象とし、日本の金融グループとしては初の取り組みとなる。
5億円投じ年27億円の増収へ
AXを当面の3大事業戦略の柱に据え、推進役には社外から人材を招いた。従業員約2万人を抱えるグループ全体で業務の自動化を進めるとともに、SBI証券では顧客対応を担うAIエージェントの開発に着手。わずか5億円の投資で年27億円という5倍超の増収を見込む計算だ。
北尾会長は「能力や手練よりも先に人物の特性」を重視して起用したと説明。Ridge-i(東京都世田谷区)の藤原小獅子社長を社外取締役として迎え、同社はSBIホールディングスの持分法適用会社として、グループ横断のエンジニアリング体制を構築し、開発から現場への定着までを担う役割を負う。
「入れて終わり」のAI診断は意味がない
AI導入と並んで時間を割いているのがセキュリティだ。北尾会長は「最新のAIを一つ導入し、それで自社ソフトウェアの脆弱性診断をして終わらせるやり方では意味がない」と指摘。攻撃の手法が日進月歩で更新される以上、ある一時点の診断はすぐに陳腐化するためだとしている。
SBIグループは、AI攻撃の可視化と継続的な監視運用を対策の基本に据える。北尾会長は「攻撃を検知してから30分以内に処理できなければ、大きな損失につながる」と警告。固定された仕組みで守る「静態」の防御では対応しきれず、状況に応じて変化し続ける「動態」の防御への移行が重要だと訴えた。
そのためSBIグループは、認証パスワードが常に変化する技術を持つ韓国のEVERSPINに早期から投資。この技術を基にした動的な防御システムをグループ全体で構築してきた。現在日本法人の設立も進めており、EVERSPIN自体も韓国式公開の準備に入っているという。
「孫さんはOpenAIだが、私はAnthropic」—選んだ理由
さらに、AIによる自動レビューを組み込んだ開発プロセスを展開し、グループ標準のAIセキュリティ基準も策定する。これは新しい技術が次々に登場する中で、個別の製品を追いかけるのではなく、基準と運用の型を先に整えるという発想に基づいている。
自社システムの堅牢化と動的なセキュリティ基準の確立。この強固な防御があって初めて、SBI証券が掲げる顧客対応AIエージェントによる「年27億円の増収シナリオ」も現実味を帯びてくる。



