三菱電機、霧ヶ峰のブランドコンセプト刷新「長い目で見ても、霧ヶ峰。」60周年に向け
三菱電機、霧ヶ峰のブランドコンセプト刷新 60周年に向け

三菱電機は、ルームエアコン「霧ヶ峰」のブランドコンセプトを刷新し、「長い目で見ても、霧ヶ峰。」を新たに打ち出した。1967年に第1号機を発売した「霧ヶ峰」は、2027年4月に発売から60周年を迎える。同社はエアコンを取り巻く環境の変化を捉え、長い目で見た「安心」と「快適」な生活環境を提供することを目指す。

「霧ヶ峰」の60年と新コンセプト

「霧ヶ峰」はルームエアコンの世界最長寿ブランドとしてギネスにも認定されている。三菱電機静岡製作所の岩上徹所長は、「人に例えると、還暦を迎えるというタイミングを前に、霧ヶ峰というブランドが、これからの社会でどうあるべきかを深く考え直した」と述べた。

これまでの霧ヶ峰は「人をもっと快適にできるはずだ」のコンセプトのもと、製品力を中心に快適を創る技術を磨いてきた。これからは快適を創るだけでなく、快適を守ることにも注力し、いきいきとした暮らしに寄り添うことを目指す。岩上所長は「買い換えの際には、『霧ヶ峰を選んでよかった、次も霧ヶ峰にしたい』といってもらえるようにしたい」との考えを示した。

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ライフサイクル全体で価値を提供

購入する場面だけでなく、使用中、メンテナンス、保守改修、再利用、買い替えというエアコンのライフサイクル全体において価値を提供する。同社が得意とするセンサー技術や、そこから得られるIoTデータ、同社のデジタル基盤「Serendie(セレンディ)」などを活用し、ウェルビーイングの向上を図るための提案を進めるという。

また、手入れのしやすさなどを追求するほか、エアコンクリーニングサービスの提供、施工業者がより施工しやすい環境の提供、使い終えた製品を回収し、再生プラスチックとして次の製品につなげて再利用する取り組みも強化し、持続可能な社会の実現にも貢献する。

岩上所長は「霧ヶ峰は、ムーブアイに代表されるセンサー技術で、一人一人の体感温度をきめ細かく見守り、人の周りを中心に空調することで、快適性と省エネ性を同時に実現してきた。だが、ハードウェアの開発がメインとなり、IoTを活用したサービス面では、ニーズを満たせていないという課題がある」とし、「新たなブランドコンセプトは、エアコンを購入する瞬間だけでなく、その後の長い使用期間までを見据えて、様々な価値を提供していくことが重要だと考えたことが背景にある。購入から買い替えまでのひとつひとつの場面で、霧ヶ峰に関わる人たちに寄り添い、価値を提供し続ける。それが、その先の製品や、次の暮らしへとつながる。これが、新たなブランドコンセプトで目指す霧ヶ峰の姿である」と語った。

エアコンを取り巻く環境の変化

ルームエアコンの世帯別保有台数は1世帯あたり2.84台で、普及率は92.2%に達し、欠かせない家電製品となっている。エアコンを取り巻く環境はこの10年で大きく変化し、電気代の高騰による省エネ意識の高まりや、トップランナー制度に基づく省エネ基準の改定に加え、2010年代には平均7日間程度だった夏場の猛暑日が、2025年は25日間と3倍以上に増加し、40度を超える酷暑日が全国で発生するなど、エアコンが生活に不可欠なインフラとなってきた。

住宅ニーズや生活ニーズの多様化、高気密・高断熱住宅の普及、ZEHやGX志向型住宅の拡大などもエアコンニーズの変化に影響を及ぼしている。コロナ禍を経た健康意識の高まりにより、エアコンの清潔性や内部の汚れや臭いに対する関心も高まっている。一方、施工現場では施工業者の数は減少傾向にあり、高齢化が進展。酷暑のなかでも短時間で設置できる施工性の向上、省人化や省力化に対するニーズが高まっている。

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「これらの変化を背景に、エアコンに求められる価値は、購入時の価格や性能、機能だけでなく、使い始めてから次に買い換えるまでのライフサイクル全体に広がっている。省エネ性や清潔性を長く保持できるか、トラブル発生時に素早く修理対応ができるかなど、使用中の安心と品質の維持が、市場から求められる本質的な価値になっている」と指摘した。

新ブランドコンセプトを体現する新製品

三菱電機は「新たなブランドコンセプトを体現した製品」と位置づける2027年度の新製品として、プレミアムモデル「ZWシリーズ」を発表した。同社静岡製作所で国内生産を行い、12機種を揃え、2026年10月30日から順次発売する。

ZWシリーズでは、負荷が少ない室温安定時の高効率運転を実現する「小能力時高効率型コンプレッサー」を全機種に搭載。設定温度到達後の室温安定時における最小出力を、従来よりも最大約60%低減し、長時間安定して運転する環境下での省エネ性を向上している。

三菱電機静岡製作所ルームエアコン製造部の松本崇部長は、「高気密・高断熱住宅では、住宅性能の向上により、冷暖房への負荷が小さくなっているため、大きな出力で一気に冷やしたり、暖めたりするのではなく、省能力時でも安定して効率よく運転することが求められている。小能力時高効率型コンプレッサーを全機種に搭載し、運転負荷が小さいときでも、きめ細かな制御や安定した室温を届けることで、快適を作り、省エネに貢献できる」とした。

霧ヶ峰の特徴のひとつが、筐体を構成する多くのパーツが外せる構造となっている点だ。この仕組みは新製品でも踏襲しており、自分で簡単に掃除ができるようにしている。

また、スマートフォンなどと連携できる家電統合アプリケーション「MyMU(マイエムユー)」の機能を拡充し、日常のさまざまな生活シーンに合わせてエアコンの運転設定を自由にカスタマイズできるようにした。「おやすみサポート」は、設定した室温を上回っている場合は自動で冷房運転を開始して就寝前に部屋を涼しくして停止。就寝中に室温が上がると自動で運転を再開して、設定した時間に停止する。さらに、アプリを通じて就寝環境の振り返りを行うことができ、次回以降、より好みに合った設定温度や希望の室温に自動で近づける機能も搭載した。

三菱電機のデジタル基盤「Serendie」の活用も進める。「おやすみサポート」も「Serendie」に蓄積されたデータをもとに、夜間に空調のオンオフを繰り返すユーザーが多いことに着目して開発したもので、就寝中の室温変化が睡眠に影響している可能性があると判断し、快適な睡眠環境を提供することを目指している。

また、「My家電レポート」を新たに用意。エアコンの使用状況を可視化し、お手入れのタイミングを知らせるといった機能も提供。事前に故障検知を行い、全国71カ所のサービス拠点を通じた迅速な修理対応につなげるほか、データに基づいた最適な買い替え提案も行う。「前月の電気代や運転時間など、使用状況をレポート形式で通知し、使い方を振り返ることで、日々の省エネ意識の向上につなげることができる」という。

なお、霧ヶ峰に搭載している「エモコセンサー」をユニット化し、集中度や眠気度などの人の感情を可視化した「感情推定データ」や、体動数および睡眠レベルなどの「バイタルデータ」、温度や湿度、CO2濃度などの「環境データ」を、法人向けに配信する新サービス「エモコ分析サービス」を提供している。ここにも「Serendie」を活用している。

同社では、プレミアムモデルの「ZWシリーズ」のほかに、フラッグシップモデルのFZシリーズ、寝室や子ども部屋などの小部屋用途向けのVシリーズ、Cシリーズ、Uシリーズ、Tシリーズ、暖房機能を強化した「ズバ暖 霧ヶ峰」として、FDシリーズ、ZDシリーズ、CDシリーズも発売する。全機種ともに、2027年度省エネ基準を達成している。

「2027年度問題」と価格への対応

国内エアコン市場は、「2027年度問題」とも呼ばれるトップランナー制度による省エネ基準の大幅な引き上げにより、2027年4月以降、省エネ基準で100%未満のエアコンは製造および販売ができなくなり、低価格帯のエアコンの品揃えが減少することになる。その影響もあり駆け込み需要が発生しており、2025年度は年間で約1000万台、2026年度は1100万台規模の水準にある。だが、2027年度にはこの反動により、800~900万台規模に減少すると見られている。

三菱電機の岩上所長は、「原料価格の高騰などの影響はあるが、技術でカバーすることで、デラックスモデルで10%程度の価格上昇に抑えている。また、長い目で見ると、省エネ化によって電気代が削減できるというメリットがある。トータルコストで比較してもらうことが、これからは重要になる」と述べた。