登山で「つながる」体験を提供するGAATESの経営戦略とは
登山で「つながる」体験を提供するGAATESの経営戦略

山梨県立大学で「ネイチャーガイド演習」を担当する今井久・山梨総合研究所理事長が、登山を通じた「つながり」を提供する株式会社GAATESの経営戦略を紹介した。同社は甲府市のアウトドアショップ「エルク」から生まれた会社で、自然を楽しむ体験を提供する「コト売り」への転換を目指している。

モノ売りからコト売りへ

エルクは1983年創業の老舗で、現在は柳沢隆広氏が経営を担う。柳沢氏は、アウトドア用品を販売する「モノ売り」から、自然を楽しむ体験を提供する「コト売り」への転換を目指し、その実現に向けてGAATESを設立した。

経営戦略の中心にあるのは「コミュニティー」だ。原点は2010年頃に先代が始めたトレイルランニングクラブ「ユムラン」にさかのぼる。湯村を走るという意味で、単なる販売促進ではなく、共通の趣味を持つ人々が集まり、交流する場をつくることを重視してきた。

初心者向けの登山サブスクリプション

登山に興味があっても「どこに行けばよいかわからない」「一人では不安」という声に応えて、登山ツアーやキャンプを企画し、参加者同士のつながりを育んできた。その延長線上にあるのが「登山サブスクリプション」だ。初心者でも安心して参加できるよう、安全なコースの選定や保険の手配などを行い、下山後には店舗で「山カフェ」を開いて参加者が交流する。そこで登山用品の購入や次のツアーへの参加にもつながる。

つまり、商品を売って顧客を集めるのではなく、コミュニティーを育てることで、結果として商品やサービスが売れる仕組みをつくっている。顧客との継続的な関係が安定した収益を生み出す点に、この経営戦略の強みがある。

地域の価値を高める可能性

人口減少が進む地域では、新たな顧客を獲得し続けることは容易ではない。だからこそ、一人ひとりの顧客との関係を深め、仲間を増やしていくことが重要になる。GAATESの取り組みは、コミュニティーそのものが企業の競争力となり、地域の価値を高める可能性を示している。