デル調査、中堅中小企業のIT投資動向2026:AI投資が本格化、インフラ投資は2桁増
デル調査:中堅中小IT投資動向2026、AI投資が本格化

デル・テクノロジーズは8月21日、日本の中堅中小企業のIT担当者を対象に実施した「中堅中小企業向けIT投資動向調査2026」の結果を発表した。調査は2026年2月から3月にかけて、中堅中小企業のIT担当者(IT導入に関与する立場を含む)を対象に、IT予算、投資配分、PCやサーバ、ストレージ、クラウド、バックアップ、ネットワーク、セキュリティ、デジタル化、AI、データセンターなどの動向を把握する目的で実施された。

この調査は、変化の激しいIT市場において「いま、何に投資し、何に悩み、どこに向かうのか」をデータで可視化することを目的に2017年から毎年実施されており、今年で10年目を迎えた。今回の調査では、メモリやSSD価格の高騰、Windows 11以降を見据えたクライアント環境の刷新、仮想化基盤やHCI(ハイパーコンバージドインフラ)から次世代アーキテクチャへの移行(脱VM・HCI)、生成AIの急速な普及といった大きな変化が、中堅中小企業のIT投資判断にどのような影響を与えているのかに焦点を当てている。また、巧妙化するランサムウェアをはじめとしたサイバー脅威への備えや、限られた人材・予算の中で「攻め」と「守り」のIT戦略をいかに両立させるかという課題についても分析している。

IT予算は回復基調、情シスは運用から戦略・AI活用へシフト

まず、ビジネス環境の現状とIT予算について、業績好調な企業は41%で4%増加し、IT予算を増額する企業も35.6%と、コロナ禍以降で最大の水準に回復した。ワンオペレーションの情報システム部門(ワンオペ情シス)は22.4%と調査開始以来最も低い数値となり、業績好調な企業ではIT投資額がその他の企業の約1.5倍から2倍と大きく、IT予算とIT人材の両方に先行投資を行っている傾向が見られた。

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また、IT担当者のPC運用などの従来業務は「変わらない」が中心である一方、生成AI開発や情報戦略策定、IT人材管理といった攻めのIT領域で勤務時間が増加している。年間IT投資額は微減ではあるものの、サーバ、ストレージ、バックアップなどのインフラ投資は2桁増加し、既存環境の運用業務にかかる時間は前年度比で5.1%減少している。一方で、AI活用を含めた情報戦略策定やシステム開発・導入が増加している。

インフラ投資は2桁増加、PC刷新は継続もサーバ刷新は慎重

IT基盤の保守運用については、46%の企業が外部委託しており、純粋にサーバやネットワーク基盤の運用・管理を外部委託する企業は23%を占めている。PCの刷新については「予定通り」が44.0%、「前倒し」が22.4%と、約66%が継続または加速する一方で、サーバ刷新は3割超が保留し、見極めに慎重な姿勢がうかがえる。

さらに、Windows 11への移行自体は7割弱が完了している反面、約3割は「一部のみ」または「これから」で、旧OSを抱えたまま長期利用している層が残存している。サポート切れのリスクを抱えるPCが一定数残っており、PCの更新サイクルは「5年以上」が過半数(52.8%)を占め、性能不足やセキュリティを満たしていない期間が長期化する懸念がある。インフラ基盤は「オンプレ中心」が51.8%、「ハイブリッド」が23.6%と依然として多数派であり、Broadcomショックなどを背景に、HCIから3Tierへの移行など脱VMの動きが加速している。

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6社に1社がセキュリティ事故を経験、運用・可視化が課題

セキュリティに関しては、直近半年で約6社に1社(16.2%)が何らかのセキュリティ事故を経験し、被害内容はフィッシング詐欺、ランサムウェア、不正ログインが上位となっている。ランサムウェア被害の復旧期間は1か月以内が中心で、調査・復旧費用は100万円未満が過半数を占める。メール、Web、VPNを入り口としたランサムウェア侵入が大きなリスクとなっている。

ランサムウェア対策としては「バックアップ」が最も重視(61.2%)されている一方、データ復旧に自信がある企業は約4割にとどまり、備えと確実な復旧の間にギャップが存在している。防御の主流はバックアップではあるものの、多層防御と具体的な導入計画が特に中小企業で大きく不足しているという。さらに、昨年に比べてポリシー未整備やパスワードルールなしなどのゼロからの整備は微減傾向にあるのに対し、「どこまで実施できているか分からない」「最新の脅威情報の収集先がない」「パッチ適用・脆弱性対応が追いつかない」といった運用・可視化・継続改善まわりの課題が昨年より目立つようになっている。ゼロトラストやSASE(Secure Access Service Edge)、IAM(Identity and Access Management)を導入している企業でも被害は必ずしも減っておらず、ツール導入だけでなく、運用プロセスの構築や従業員教育の有無が成否を分けているとのことだ。

クラウド活用は二極化、AI投資が本格化

一方、IaaS(Infrastructure as a Service)の普及率は約39%で頭打ちの傾向だが、オンラインストレージは半数超が本格利用段階に達している。IaaSの利用用途としては、グループウェアやファイル管理、バックオフィス業務を中心にクラウド利用が進む一方で、受発注・生産・在庫などの基幹系システムのクラウド移行は限定的な状況となっている。利用サービスでは、AWS(Amazon Web Services)とMicrosoft Azureが突出しており、事実上の二大選択肢となっている。オンラインストレージは「半数超が本格利用」段階に到達しており、「ほぼすべて」「半分くらい」「ややある」を合わせると52.8%を占める結果となり、約2割は利用していないと回答し、導入済み企業と未導入企業の二極化が浮き彫りになった。クラウドバックアップの利用は3割強、未利用が4割超となっており、バックアップ自体は広く実施されている反面、クラウドを活用した「オフサイト・バックアップ」や「災害対策」まで踏み込んでいる企業は一定数を超えていない状況となっている。グループウェアと同一ベンダーのAI(CopilotやGeminiなど)が第一候補になる傾向があるものの、複数のAIサービスを併用するユーザーも多数派だという。

DX推進体制に関しては、約9割の企業でIT部門がDX推進の中心であり、人材確保の軸は自社育成と外部連携のハイブリッドである。DXの取り組みはワークフロー電子化など「電子化・見える化」が主戦場であり、約半数の企業がDXが「進んでいない・遅れている」と自己評価している。AIや生成AIに100万円以上投資を予定する企業が68.1%に達し、本格的な投資対象へと昇格しているが、AI PCの活用は未だ限定的。2026年は「AI PCの実験フェーズ」から「用途が明確な業種での本格活用」へ移行する過渡期で、AI投資自体の大幅な増加によりAI PCニーズも連動して拡大の傾向にあるとのことだ。モダンインフラについては全体では「物理中心」が約6割だが、500人以上の企業では仮想・コンテナなどの非物理中心が約6割に達した。また、データセンター利用企業の約6割が何らかの課題を抱えており、特に従業員規模が大きいほど「運用コスト」と「人材・スキル不足」が顕在化している。GPUサーバ導入は全体で1割未満の少数派だが、導入企業では推論、学習、VDIや可視化など用途が分化し、AI PCやモジュラーデータセンターと組み合わせたハイブリッド構成を志向する動きが見られた。