熱波で変わるフランスの不動産事情、最上階は「オーブン」と敬遠
熱波で変わる仏不動産事情、最上階は敬遠

フランスで今年、住み替えを検討する人々の間で「暑さ」への警戒感が強まる傾向がみられると不動産業者らが語った。希望する条件で急浮上しているのは、雨戸(シャッター)、エアコン、直射日光の当たらない間取りだという。

オスマン様式最上階は「オーブン」状態

パリでは今夏、亜鉛屋根で知られる伝統的なオスマン様式の建物最上階の部屋がまるで「オーブン」のようになっている。パリの不動産会社「FredeLion」のジョゼフ・ダンケ氏は「オスマン様式の建物では、最上階の暑さがまさに耐えがたいレベルになる」とし、ここ数か月で買主の優先事項に変化が見られると語った。同氏は、南向きの窓を警戒する動きも出てきていると指摘した。

現在、新しい部屋を模索中でダンケ氏から部屋を紹介されているというカミーユ・クチュリエさんにとって、屋根裏部屋のようなワンルームで風通しが悪いことから生じる「暑さのリスク」は、大きなマイナス要素となる。クチュリエさんは「最近は6月どころか、5月にも熱波に襲われる」とし、少なくとも10年、15年先まで「快適に住み続けられるか、それとも暑すぎるとの理由で皆と同じように逃げ出す羽目になるのか」を懸念していると話した。

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住宅の半数が熱がこもりやすい構造

民間調査機関によると、フランスの住宅の約半数は、実質的に熱がこもりやすい構造になっているという。また、掲示板サービス「ル・ボンコワン」が6月に利用者1750人を対象に行った調査では、10人中8人が猛暑時に不快感を覚えたと回答し、3分に1人が熱波がさらに激しくなれば引越しを検討すると答えた。

専門家らは、気候変動の影響によりこうした事態は想定されていると警鐘を鳴らす。フランス気象庁は今週、今期5度目の熱波への警戒を呼びかけ、「今後、夏は概してこれまでに経験した夏よりも暑くなるだろう」との見解を示した。

ル・ボンコワンでマーケティングディレクターを務めるソフィー・ブール氏は、熱波がいまや「住宅を選ぶ際の決定的な要素として定着している」と指摘し、「涼しさや夏の快適性は、それ単体で物件を決める大きな基準になっている」と語った。

「方角」「階数」「雨戸」が重視される

現在、「方角」「階数」「プール」「エアコン」「雨戸」「風通しの良さ」「屋外スペース」「日陰のあるテラス」「周辺の街路樹の有無」といった条件が、物件を探す買主や借主から頻繁に挙げられるようになっている。

不動産大手ネットワーク「ラフォレ」のヤン・ジェアノ社長は「買主は物件そのものだけでなく、その住み心地の良さを見るようになっている」と語り、「前回の熱波の時の室温はどれくらいだったか、夜間に換気(通風)は可能か、寝室でぐっすり眠れるかといった、非常に具体的な質問を不動産屋に投げかけてくる」のだと説明した。

この懸念はすでに一部の物件の魅力に影響を与えている。パリ5区の高級住宅街で「大きな窓のある素晴らしい物件」の販売を担当する不動産エージェントのクリスチャン・トコト氏は、「内覧は多いものの、両側に窓がなくて風が抜けないため、顧客から『暑すぎる』と言われてしまう。まだ売れ残ったままだ」と明かす。

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フランスでは長らく敬遠されてきたエアコンも、ジェアノ氏によれば「もはやまったくタブーではなくなった」という。不動産メディア「PAP」のレティシア・キャロンCEOは、特に室外機の設置許可を得る手続きが複雑な集合住宅では、すでにエアコンが設置されていること自体が買主にとって大きなアピールポイントになると語る。売主側もこれに対応し、物件情報でエアコンや日よけ雨戸など、夏の快適性に関する機能をより強調するようになっている。

「大移動」はまだ起きず

近年の熱波が「人々の居住地の選択」に与えている影響の度合いを推し量るには、まだ難しい側面もある。ル・ボンコワンのブール氏は、住民の「大移動(エグゾダス)」はまだ起きていないが、かつては街の魅力や雇用の機会を最優先して住む場所を選んでいた人々が、今では「気候の快適さ」に基づいて判断するようになっているとし、これは全く新しい動きだと指摘した。

ラフォレのジェアノ氏も、こうした動きを「意識の持続的な変化」の現れだとみている。同氏は、熱波や森林火災、その他の極端な気象現象に触れつつ、「気候変動が不動産市場に影響を与えているのは明らかだ」と話し、またこうしたリスクの存在により、買主が「住宅ローンの10〜20年先を見据えて計画を立てることがますます難しくなっている」と指摘した。