JR東海と静岡県が自然環境保全協定を締結したことにより、リニア中央新幹線の静岡工区が年内にも着工される見通しとなった。9年にわたって停滞していた事業が大きな転換点を迎える中、JR東海の宇野護副会長(72)がインタビューに応じ、プロジェクトの意義や今後の課題について語った。
「エポックメイキングなこと」と感謝
宇野副会長は、静岡県知事や県民、大井川流域の関係者への感謝を述べ、「これでほっとしたというわけではなく、非常に難しく長い工事のスタートに向けてしっかり準備しなければならない」と強調。また、南アルプストンネルの工事状況に基づき、なるべく早く開業時期を明らかにしたいと述べた。
静岡工区の工事契約が結ばれたのは9年前。なぜこれほど時間がかかったのかについて、宇野副会長は「環境アセスメントで、対策をしなければ大井川の水が最大毎秒2トン減るとの予測を示したが、『毎秒2トン』が独り歩きして流域の皆さんに心配をかけた」と振り返る。同社は保全措置を講じ、水利用者に不便をかけない方針を示していたが、懸念が広がったという。
環境対策については、静岡県の専門部会や国土交通省の有識者会議で科学的な議論が行われた。宇野副会長は「流域の皆さんの不安を和らげるには、JR東海への信頼が鍵となる。そのためのコミュニケーションを醸成するのに時間がかかった」と説明した。
人口減少社会でのリニアの意義
人口減少社会においてリニア建設の意義を問う質問に対し、宇野副会長は「国力維持に大動脈強化が必要だ」と明言。リニア中央新幹線は東京、名古屋、大阪を結ぶ大動脈であり、経済活性化や地域間格差の是正に寄与するとの見解を示した。
また、最難関とされる南アルプストンネル工事については、深さが東京スカイツリー2本分に相当する約1400メートルに達し、過去に例のない難工事が予想される。建設費も当初の9兆円から倍増の約18兆円に膨らんでおり、コスト管理の重要性が増している。
宇野副会長は「開業時期をできるだけ早く明確にしたい」と述べ、工事の進捗に応じて具体的なスケジュールを公表する方針を示した。静岡工区の着工は、リニア中央新幹線の全線開業に向けた最後のピースとなる。



