世界的なEV(電気自動車)シフトが加速する中、大手自動車部品メーカーのデンソーが、水素エンジン車の開発・生産に本格参入することを発表した。これは、EV一辺倒ではないカーボンニュートラル実現への多様なアプローチを模索する動きとして注目される。
デンソー、水素エンジン車への本格参入を発表
デンソーは2023年11月、水素エンジン車向けの燃料噴射システムや点火プラグなどの主要部品を開発し、2025年までに量産を開始する計画を明らかにした。同社はこれまでHV(ハイブリッド車)やEV向け部品に強みを持っていたが、今回の決定は戦略の大きな転換点となる。
デンソーの林新之助社長は「水素エンジンは、内燃機関の技術を活かしながらCO2排出を実質ゼロにできる有力な選択肢だ。商用車や特殊車両など、EV化が難しい分野での需要を見込んでいる」と述べている。
背景にあるEVシフトの課題
世界的にEVシフトが進む一方で、バッテリーの原材料調達や充電インフラ整備、航続距離などの課題も顕在化している。特に大型トラックや建設機械など、長距離・高負荷の用途ではEVの普及が難しいとされる。
デンソーは、こうした分野で水素エンジンが有効と判断。水素エンジンは、従来のガソリンエンジンとほぼ同じ構造で製造でき、既存の生産ラインを転用しやすい利点がある。また、水素は燃焼してもCO2を排出しないため、カーボンニュートラル燃料として期待されている。
業界内外の反応と今後の展望
自動車業界からは「デンソーの決断は、EV一辺倒の議論に一石を投じるものだ」(業界アナリスト)との声が上がる。一方、環境団体からは「水素の製造過程で化石燃料を使う限り、真のゼロエミッションとは言えない」との批判もある。
デンソーは、水素エンジン車の普及に向けて、トヨタ自動車などとの連携も視野に入れている。トヨタはすでに水素エンジン車の開発を進めており、2023年の富士24時間レースに水素エンジン搭載のGRカローラを投入している。
デンソーは、2030年までに水素関連事業で年間1000億円の売上を目指すとしている。同社の戦略転換は、自動車業界のカーボンニュートラルへの道筋に新たな選択肢を加えるものとして、今後の動向が注目される。



