国内のコメ消費量が減少傾向にある中、コメの新たな消費先として国産米100%のビール造りに取り組む人物がいる。三重県桑名市の酒造会社「ライスハック」代表の道口靖央さん(37)だ。法律上は発泡酒に分類されるが、米100%のビール「ORYVIA(オリビア)」を開発し、現在4種類を販売している。
京都大学からロッテ、そしてビールの道へ
神奈川県海老名市出身の道口さんは京都大学に進学し、大学院まで進んだ。冷凍食品の品質評価などを研究した後、菓子メーカーのロッテに入社。日本酒好きが高じて26歳で利き酒師の資格を取得した。日本酒造りにも興味があったが、「日本酒の香りがするようなビールを造ってみるのも面白い」と考え、30歳でロッテを退職。オーストラリア・シドニーに渡り、現地のビール醸造所でビール造りの基礎を学んだ。
そこで原料の約25%にコメを使ったライスラガーと出会い、「ライスラガーの存在を知り、米100%のビール造りへの具体的なイメージが浮かんだ」と振り返る。帰国後は福井県の酒蔵で約半年間、酒米の扱い方や日本酒の造り方などを修業した。
試行錯誤の末に完成した「オリビア」
味の安定と米ビール特有の香りを出すことに苦労し、当初は「最初に造った時は、はき出すほどまずかった」と苦笑いする。それでも試行錯誤を繰り返し、構想から約10年を経て製品化の道筋が見え始め、2024年にライスハックを設立。2025年に桑名市長島町の醸造所で製造を開始した。
完成した「オリビア」は、ラテン語でコメを意味する「ORYZA(オリザ)」と「BEER(ビア)」を組み合わせた造語で、ビアを「VIA(~を通じて)」と表記し、「お米を通して社会に貢献したいという思いを込めた」という。ビールの醸造技術と日本酒造りを融合させた100%米ビールは、麦芽由来の苦みがなく、口当たりが優しく飲みやすい。さらに小麦などを使わないグルテンフリーで、アレルギーを持つ人でも楽しめる。
販路拡大と海外輸出への展望
「グルテンフリーの商品は世界的に市場が伸びている。購入者から『アレルギー持ちでも安心して飲める』と喜んでもらっている」と道口さん。米ビールはネットや国内の小売店などに販路を広げ、2025年12月には桑名市のふるさと納税の返礼品にも採用された。2026年6月からはオーストラリアへの海外輸出も始め、認知度を高めている。
「国産米100%で造ったビールの魅力を国内外に広げていきたい」と意欲を見せる道口さん。米ビール造りを本格化して1年、今後の展開が期待される。



