大鵬薬品工業は、社内の部門間交流が乏しい課題を解決するため、書籍要約サービス「flier」が提供する「要約読書会」を導入した。この取り組みは3カ月ごとに実施され、今回で3回目を迎えた。背景には、社内の対話をより深めたいという経営陣の強い意図がある。
従来の取り組みとその限界
同社ではこれまで、過去のプロジェクトや製品開発の過程をまとめた「エピソードブック」を活用し、社員同士の対話を促進してきた。先人たちが困難をどう乗り越えたかを題材に、「大鵬らしさ」とは何かを考えることが目的だった。しかし、製薬会社ならではの専門用語が多く、社員によっては内容の理解に困難を伴うケースがあった。また、過去の事例を扱うため、一部の社員からは「成功体験の押し付け」と受け取られる可能性も指摘されていた。
要約読書会の導入とそのメリット
そこで着目されたのが、一般書を題材にした要約読書会だった。全員が同じスタートラインに立てるため、知識レベルの差に左右されず、参加者全員がフラットな状態で対話を始められる点が評価され、社長室主導で導入が決まった。flierの担当者は「反響の大きさに驚いた」と語る。
具体的な実施内容と効果
今回の読書会では、1983年刊行の『思考の整理学』が選ばれた。同書は、コンピューターが記憶や計算を代替し、人間は創造性で価値を発揮する時代が来ると予見していた。社長室は、この40年前の視点を手がかりに、「AI時代に人間が担うべき役割とは何か」を社員同士で考えるきっかけにしたいと考えた。当日は「AIに任せる領域と、人間が担うべき領域とは何か」をテーマに議論が行われ、生成AIの活用が広がる中、技術を使いこなすだけでなく、自ら考え、対話することの重要性について意見が交わされた。参加者からは「営業には営業の、開発には開発の苦労が知れてよかった」との声が上がった。
今後の展望
同社は今後も要約読書会を継続し、部門間の壁を越えた対話を促進する方針だ。この取り組みは、日本企業の多くが抱える社内コミュニケーションの課題に対する一つの解として注目されている。



