2026年ノーベル物理学賞は「アイスキューブ」、南極の巨大ニュートリノ観測所が受賞
ノーベル物理学賞は「アイスキューブ」南極の巨大観測所

2026年のノーベル賞サイエンス3部門(生理学・医学、物理学、化学)が決定した。日本からは東京理科大学の硤合憲三氏が化学賞を受賞し、物理学賞は南極点に設置された巨大ニュートリノ観測装置「アイスキューブ」を率いた米ウィスコンシン大学のフランシス・ハルツェン氏が受賞した。

化学賞は硤合憲三氏、不斉自己触媒の発見で

化学賞は、東京理科大学の硤合憲三氏が「有機合成における不斉自己触媒」、いわゆるSoai反応の発見で受賞した。パリ・サクレー大学のアンリ・カガン氏と2人での受賞で、研究は約30年前のものだ。

アミノ酸には鏡像関係にある左手系と右手系が存在するが、生物は左手系を優先的に利用している。硤合氏らは、わずかな偏りが増幅されて一方だけが生成される反応を発見し、生命の左右性の起源を解明する手がかりを与えた。

生理学・医学賞は光遺伝学、脳の神経細胞を光で制御

生理学・医学賞は、光遺伝学の開発に貢献した3人が受賞した。光を脳の特定部位に当てることで神経細胞をオンオフできる技術で、記憶や感情、行動の仕組みの解明や、アルツハイマーやうつ病などの脳疾患の研究に道を開くものだ。

受賞者の一人である米スタンフォード大学のカール・ダイセロス氏は精神科医でもあり、臨床現場での経験が研究の原動力となった。受賞が決まった際の家族の喜びの様子が大学のインスタグラムで公開され、話題を集めた。

物理学賞「アイスキューブ」は1キロ四方の巨大装置

物理学賞は、南極点の氷床を利用したニュートリノ観測所「アイスキューブ」の建設と、天体起源の高エネルギーニュートリノの発見が評価された。受賞したハルツェン氏は、千葉大学も参加する国際プロジェクトを主導し、世界で唯一の観測装置を完成させた。

アイスキューブは地下2450メートルに86本の穴を掘り、合計5160個の光センサーを設置した装置だ。厚さ1キロメートルの氷の層を利用し、ニュートリノが物質と反応した際に生じるチェレンコフ光を捉える。南極点は標高約2800メートルにあり、冬季は半年間アクセス不能となるため、約100人の隊員が基地に閉じ込められるという過酷な環境だ。

南極点が選ばれた理由は、透明度の高い氷が大量にあるためだ。地下深くで圧縮された氷は気泡が押しつぶされ、100メートル先が見えるほどの透明度を持つという。この氷を利用することで、まれにしか発生しない高エネルギーニュートリノを観測できる。

アイスキューブは2013年に天体起源の高エネルギーニュートリノを初検出し、2017年にはブレーザー起源、2022年には活動銀河核からのニュートリノを捉えるなど、宇宙の謎の解明に貢献してきた。1912年の高エネルギー宇宙線の発見以来の謎に迫る成果として、今後のさらなる観測が期待される。