関西医科大と昭和医科大の研究チームは、人のiPS細胞から腹膜の細胞を効率的に作製することに成功したと発表した。腹膜は腹部の内側を覆う半透明の膜で、腎不全患者が自宅で行う人工透析「腹膜透析」によって傷むことがある。この成果は、損傷した腹膜の治療法や再生医療の研究に役立つと期待される。
研究の背景と意義
腎不全になると、腎臓の代わりに血液中の余分な水分や老廃物を取り除く人工透析が必要となる。医療機関で機械を使用する「血液透析」が一般的だが、近年は自宅でできる腹膜透析の患者が増えつつある。しかし、腹膜透析は腹膜の細胞が傷むことなどから8~10年間が限度で、中断せざるを得ない患者も存在する。
関西医科大の人見浩史教授(再生医学)や昭和医科大の加藤憲講師(腎臓内科学)らは、iPS細胞に特定の試薬を加え、腹膜の表面にある中皮細胞を効率的に作製することに成功した。この細胞を腹膜が傷ついたマウスに投与すると、腹膜が修復され、老廃物を取り除く機能も改善した。
専門家の見解と今後の展望
人見教授は「患者さんが腹膜透析を断念せずに済むよう、腹膜を修復する再生医療を実現したい」と話している。研究論文は国際科学誌に掲載された。
一方、東京慈恵会医科大の横尾隆教授(腎臓病学)は「腹膜の傷み方には個人差が大きく、その仕組みの解明や予測に生かせる成果だ。現時点ではマウスで効果を確認した段階で、人の治療に使うには時間がかかるだろう」と指摘する。
腹膜透析の現状
腹膜透析は、おなかに通した管から腹膜の内側に専用の液体を注入し、液体に染み出した血液中の老廃物などを取り出す治療法。血液透析と比べ、通院頻度が減る利点がある。日本透析医学会によると、国内では2024年に約1万1000人が行っている。



