静岡県御殿場市の「みくりや農と食の研究会」は、御厨地方で作られてきた在来作物「板妻もろこし」を中心に、10年以上にわたり栽培を続けている。代表の杉山明さん(75)は「後世に残しておきたい作物の一つ。板妻もろこしの存在や役割を伝えていきたい」と話す。
粒が大きく濃い黄色が特徴
板妻もろこしは、この地域で昔から作られてきた在来作物のトウモロコシ。粒が大きく、濃い黄色をしているのが特徴で、おいしく食べられる期間は短く、収穫から数日間だけ。畜産業が盛んだった同地域では、新鮮なものを焼いて食べるほか、団子やポップコーンにしたり、家畜の飼料にしたりして利用していたという。
研究会が栽培を始めたのは、県内の大学教授らで作るグループから、御殿場に伝わる在来作物の有無を聞かれたことがきっかけ。市内の回覧板で情報を集めたところ、市民から「自分ではもう作れないから」と種が提供された。
苦難乗り越え12年目
2015年、研究会で初めて栽培し、約100キロを収穫した。当時の食べ方の再現や、新しい食べ方について考える会も開くなど、有効な活用手段についても考えた。
しかし、これまでの歩みは順調ではなかった。食べきれなかった板妻もろこしを粉にして冷蔵庫で保管していたところ、かびが発生。メンバーたちは本来、保存が難しい食物だと知らなかったという。昨年はハクビシンやカラスに食べられたり、虫が入り込んだりして、畳3畳ほどの広さに植えていた50本ほどの苗が全滅した。ネットを張るほか、虫については消毒を行う対策もしていたという。
苦難も乗り越え、研究会は今年で12年目となった。現在は1アールほどで栽培し、収穫したらポップコーンにしてメンバーらで食べるなどするという。杉山さんは「誰かが栽培しないと途絶えてしまう。研究会で板妻もろこしを守っていきたい」と力を込めた。
収穫体験で在来作物PR
地域の在来作物について知ってもらおうと、研究会と御殿場市が協力して、2024年度から作物の種まきや収穫体験を始めた。研究会が借りている7アールほどの畑で6月にサトイモ「やいちいも」や黒豆のほか、この地域で作られているサツマイモ「紅はるか」などの種をまき、10月に収穫するもの。採れた野菜を持ち帰ることができる。板妻もろこしについて、会のメンバーが紹介する時間も設けられているという。
市の担当者は「在来作物を知ってもらうとともに、野菜に興味を持つきっかけにしてほしい」と話した。



