Amazon Web Services(AWS)は2026年9月2日(現地時間)、米国と日本を結ぶ海底ケーブル「Sta'O'Nuk」を開発すると発表した。毎秒420テラビット(Tbps)の伝送容量を持ち、2029年の運用開始を見込む。ケーブルは同社のリージョン間を結ぶネットワーク「AWS Global Network」に組み込まれる。
太平洋横断ケーブルはなぜ「同じ場所」に集まるのか
太平洋を横断する海底ケーブルは既に30本以上が運用されている。米国と日本の間では、その大半が決まった経路に沿って敷設され、陸揚げ地も限られた地域に集まってきた。
既存の太平洋横断ケーブルが特定の地域に集中しているのは、数十年前にルートが確立された当時、実績のある経路と陸揚げ地を使い回すことが合理的だったためだ。ただしAWSは、この集中が地震や船舶の錨(いかり)、漁業活動といったリスクの共有を招いていると指摘する。
米国と日本を結ぶ既存ケーブルの多くは、米国側でカリフォルニア州やオレゴン州の沿岸に、日本側で三重県の志摩や千葉県の銚子半島に陸揚げされている。同じ地域にケーブルが集まると、地震や錨による損傷、漁業活動、地政学的な緊張といったリスクを共有することになる。AWSによると、世界では年間約200件のケーブル切断が発生しており、その多くは漁業活動と錨の引きずりが原因だ。切断されたケーブルの修理は、船上で光ファイバーをつなぎ直す時間と費用のかかる作業になる。
「Sta'O'Nuk」が選んだ新ルートとセキュリティ対策
Sta'O'Nukは米国側でワシントン州に陸揚げされる。国際海底ケーブルが同州に上陸するのは約30年ぶりで、日本側の陸揚げ地点も既存の集合地域から地理的に離れた場所を予定している。
既存の経路から独立した通信路を確保することで、従来の回線が自然災害や人為的要因で損傷した場合でも、AWSの集中型トラフィック管理システムが障害を検知し、隣接のトラフィックを複数の独立した経路に自動で振り替える。AWSは、ネットワーク障害の大半を人の手を使わずに解決しているとしている。
Sta'O'Nukは20対の光ファイバーペアで構成され、最新世代の海底伝送装置と光技術を採用する。420Tbpsは、高精細(HD)映像約1300万本を同時にストリーミング配信できる規模に相当する。将来は接続点を追加して容量を拡張したり、接続先を広げたりできる設計とした。AWS Global Networkは39のリージョンと124のアベイラビリティーゾーン、46のローカルゾーン、750超の接続点を2000万キロメートル超の光ファイバーで結んでおり、Sta'O'Nukはこの網に統合される。
セキュリティ面では、ケーブルを流れるデータを複数の層で暗号化する。物理層では量子コンピュータによる解読に備える暗号方式(耐量子暗号)を使った光暗号化を、データリンク層では「MACsec」を、トランスポート層ではTLS/SSLまたはQUICを適用する。物理的な保護としては、水深1500メートルまでの区間でケーブルを装甲化して海底に埋設する。陸揚げ地点では水平方向に掘り進める「HDD(Horizontal Directional Drilling)工法」を使い、海岸や港湾、浅い海底の下にケーブルを通して地表や漁業への影響を抑える。
AWSは、生成AIモデルの分散学習や金融取引など、北米とアジア太平洋間で大容量かつ低遅延の通信を必要とする用途が増えているとし、Sta'O'Nukをこれらのワークロードを支える基盤に位置付けている。



