日本国内の65歳以上の認知症患者数は推計443万人(令和4年時点)。前段階の軽度認知障害(MCI)を含めると、高齢者の3人に1人が認知機能に関わる症状を抱える。特に認知症患者の半数以上を「アルツハイマー型」が占めており、早期発見が対策の鍵となる。
高齢化が進む中、認知症は誰もが無縁ではいられない病気だ。21日の「世界アルツハイマーデー」を前に、大阪公立大医学研究科の上村麻衣子講師(46)に、発症のメカニズムや予防法、家族や社会が患者をどう支えていくかを聞いた。
認知症のメカニズムと予防法
認知症は単一の病名ではなく、記憶や判断力、言語能力などの認知機能が低下し、日常の社会生活に支障をきたした状態の総称だ。代表的なものがアルツハイマー病で、脳内にアミロイドβやタウというタンパク質が異常に蓄積することが特徴とされている。本来なら分解、排出されるべきタンパク質が凝集してたまることで神経に影響を与え、認知機能障害が発生する。
発症リスクとしては加齢や遺伝的要因が知られるが、英医学誌「ランセット」によると、生活習慣や環境などの修正可能なリスク因子に対処することで、認知症の約45%は予防または発症を遅らせられる可能性があるとされている。アミロイドβは睡眠中に排出されるため質の良い睡眠も欠かせず、体を動かし、人と関わり、生活習慣を整えることで、自分の力でリスクを抑えられる可能性がある。
治療の進展と早期診断の取り組み
令和5年以降、アルツハイマー病の原因に関わるアミロイドβを取り除く抗体医薬品が登場した。一度失われた神経細胞を元に戻すことはまだできないが、早期に投与すれば進行を遅らせることが可能になり、現場でも手応えを感じている。さらに次々と新しいアプローチの研究が進んでおり、将来的に選択肢は増えると期待されている。
現在は、脳内の異常タンパク質を画像化する「PET検査」などにより、症状が軽いうちに精密な早期診断ができるようになった。大阪公立大では、令和9年5月に病院や研究所、老健施設が一体となった「大阪健康長寿医科学センター」の開設を予定している。将来は、街中で一滴の血液から15分程度でリスク判定ができる簡易スクリーニング技術の実用化を目指し、リスクの高い人をPET検査などの精密検査へつなぐ仕組みをつくる。「症状が出てから受診する時代」から「健康診断感覚で予防や早期介入につなげる時代」へのシフトを目指す。
家族や社会の支え方
認知症と診断されても人生が終わるわけではない。認知症が進むと記憶は途切れても、自尊心は最後まで残る。自身の認識と現実が乖離する不安から精神症状が出やすくなるため、「ご飯はさっき食べたでしょ」と否定するのではなく、「まだ食べていないと思っているんだな」と本人の世界を一度受け止める対応が不安を和らげる。患者本人が抱え込まず、周囲が理解して最後まで人間らしく過ごせるよう助け合える社会が求められている。



