「怪談」で知られる明治の作家・小泉八雲(ラフカディオ・ハーン)を支えた教育者、西田千太郎(1862~97年)の旧居(松江市新雑賀町)が、往時の姿を取り戻しつつある。多額の支援金がクラウドファンディング(CF)で集まり、傷みの激しい箇所の修繕作業が本格化。屋根瓦の寄付もあって解体の危機を免れ、「松江の貴重な資産を後世に」と願う市民有志らの思いが紡がれた。
千太郎の旧居、CFで944万円の支援
千太郎は、今年3月まで放送されたNHK連続テレビ小説「ばけばけ」で、俳優の吉沢亮さんが演じた教育者・錦織友一のモデルとなった人物だ。1869年(明治2年)に建てられた旧居は千太郎が18歳から亡くなる34歳まで過ごし、子孫が暮らした後、長く空き家になっていた。
旧居には八雲に関する資料が多く残されていたことから、市民有志らが2025年6月、一般社団法人「まちなかプラン」(松江市)を設立して保全活動を開始。雨漏りがひどい屋根や床の修復、壁の張り替えなどに充てる費用を捻出しようと、今年3月からCFで支援を募ったところ、1122人から約944万円が寄せられた。
特殊な瓦の提供で修繕が前進
修繕にあたり、関係者が頭を悩ませたのが屋根瓦だった。旧居では、現在ほとんど流通していない「左桟瓦(さぜんかわら)」と言われる特殊な瓦を使用。ふき替えには約1400枚が必要だが、再利用できるのは500枚程度で、足りない分は別の瓦を購入する予定だった。
そんな中、朗報が舞い込んだ。「役に立てるのなら使ってほしい」。松江市雑賀町の伊藤俊彦さん(63)から、取り壊す借家の左桟瓦を提供したいという申し出があり、枚数は約1000枚にものぼった。
瓦募金も約300万円に、見学会は9月中旬から再開
同法人は修繕費を確保するため、CFとは別に「瓦募金」と銘打った取り組みも実施。瓦1枚につき、1万円の寄付をした人が自分の名前を書き入れる取り組みで、支援金は約300万円に達した。ほかにも、千太郎の後輩で「日本近代スポーツの父」と呼ばれた岸清一の生家(松江市雑賀町)が解体された際、近隣住民が記念に取っていた26枚の左桟瓦も提供された。
支援の輪が広がる中、同法人は瓦募金を継続し、CFの第2段も検討する。旧居の見学会は、修繕作業に一定のメドが立つ9月中旬から再開する予定だ。
同法人の今岡克己理事長は「多くの支援で、ようやくここまで来ることができた。旧居の修繕にはお金も時間もかかるが、八雲や千太郎の思い出がたくさん詰まった場所が松江の貴重な観光資源として多くの人たちに愛され、地域の誇りになるよう、引き続き頑張っていきたい」と話す。



