「あしたのご飯は何?」「内緒だよー。あしたも来てね」「えーっ。久しぶりにあしたが楽しみ!」。NPO法人「災害支援団ゴリラ」(岡山市)の副理事、中上しのぶさん(59)は、こんなやり取りが忘れられない。
熊本地震で甚大な被害を受けた熊本県八代市へ、炊き出しボランティアに行った8月。避難所で支援活動をしていた地元の女子中学生たちとの会話だった。彼女たちが何げなく使った「久しぶりに」という一言に、中上さんは胸がいっぱいになったという。本来ならば「あした」が日々楽しみで仕方ないはずの年頃なのに、と。
避難所での心温まる交流
ゴリラのメンバーたちが活動する場所は中学校の体育館の軒下だった。調理や片付けの合間に、被災者たちと言葉を交わすことも多かった。父親と一緒に近寄ってきた、小学生くらいの女の子がいた。代表理事の茅野匠さん(53)が「何が食べたい?」と尋ねると、屈託なく「アサリ!」と即答した。
たまたま用意していた食材にアサリがあったため、翌日にクラムチャウダーを作った。その子が、受け取りに来た。アサリを「増し増し」でよそうと、うれしそうな顔で受け取った。
被災者からの感謝のメッセージ
その後、父親からお礼のメッセージが来た。「余震があり、キッチンで火を使うのも怖く、毎日カップ麺やレトルトの食事だった。炊き出しがあると聞いて来た。食べたいと言ったアサリが本当に出てきてびっくりした。つらくて怖くて何もできない夏だけど、楽しい思い出になった」と記されていた。
避難所生活について「プライベートがないだけで、快適!」とちょっぴり強がったように話した中学生。配った菓子に添えたゴリラからの激励メッセージカードを携え、調理場所へお礼に来て「ありがとう。おばちゃん頑張るからね」と大声で叫んだ女性……。何とか前を向こうと自分を奮い立たせる人々の姿に、メンバーたちは触れた。
「おいしかったよ」という最高のアンサー
炊き出しの料理は、プラスチック製容器によそう。食事の後、同じサイズの容器はきれいに重ねて戻されていた。残飯や箸は、それとは別にまとめて整然と置かれていた。「おいしかったよ」――。そんな最高のアンサーだと、中上さんは受け取った。
その後も各地で災害が相次ぐ。「私たちが出動する必要がないのが一番いい」と言いながら、被災者に心を寄せるゴリラのメンバーたち。「あした」を信じる希望になりたい、と。



