瀬戸内産業芸術祭、岡山・愛媛の7団体が参加 塩や蓄電池など特徴生かした展示
瀬戸内産業芸術祭、岡山・愛媛7団体が参加 塩や蓄電池など

瀬戸内海地域の工場を舞台にした分散型芸術祭「瀬戸内産業芸術祭」が開かれている。初の正式開催となる今年は、岡山と愛媛両県の7団体が参加。塩や蓄電池、衣服など、地域を支えてきた各産業の特徴を生かし、芸術家が独自の視点で表現したインスタレーション(空間芸術)や映像作品が展示される。工場を「美術館」として楽しんでもらい、製造業への関心を高めることが狙いだ。

発起人は蓄電池製造の新興企業社長

発起人は、蓄電池製造の新興企業「パワーエックス」(本社工場・玉野市)の創業者である伊藤正裕社長(43)。近年は情報産業などの存在感が高まる中、国内の製造業はどこも担い手不足や技能継承の課題を抱えていることに問題意識を持っていた。

伊藤社長自身も玉野市に国内最大級の工場を作り、東京と並ぶ拠点の一つとすることを決めた際、地方の工場に優秀な人材を呼ぶことに課題を感じた。働く意欲を持ってもらえるよう、設計は世界的建築家の妹島和世さんに依頼。白や銀を基調とし、天井から自然光を取り入れるスタイリッシュなデザインだ。

昨年は、瀬戸内国際芸術祭に参画して工場見学ツアーを行い、工場内に作品も展示した。同社の採用は倍率が100倍を超えるなど好調で、製造業と芸術を掛け合わせることへの手応えを感じながら、芸術祭の構想を温めていった。

参加団体と展示内容

昨年1月には、3会場で3日間だけのモニターツアーを開催。今年、日本産業芸術財団を設立し、6団体が伊藤社長の呼びかけに応じて芸術祭に参加することになった。

その一つのナイカイ塩業(玉野市)は1829年創業の老舗で、塩だけでなく、様々な化学製品の原料となるマグネシウムなども製造している。今回は、塩だけで作った直径約10メートルの巨大な絵画を中心としたインスタレーションを展示し、塩の白さが際立つ鑑賞空間が作られる。

すでに個別チケットは完売する人気ぶりで、野崎哲太郎社長(41)は「駅から遠いこともあり、普段はなかなか見学に来てもらえないが、芸術祭がきっかけになる」と期待。社員約10人が案内役を務める予定で、「社外の人に説明するために、社員自身が勉強する良い機会にもなっている」と話す。

制服大手の「トンボ」玉野本社工場(同市)では、3人の作家が手がけた青春がテーマのオーディオドラマを聴きながら、資材倉庫や検品、アイロンなどの製造工程を見学する。ドラマには県出身の女優、桜井日奈子さんも出演する。

パワーエックスの工場では、電力供給という社会基盤の中で、蓄電池がどのような役割を果たしているのかを光を使って表現したインスタレーションが展示される。

他の会場は、藤クリーン(岡山市)、児島ジーンズストリート(倉敷市)、三国工業(玉野市)、オオノ開発(愛媛県東温市)。各会場では作品だけでなく、社員らから詳しい説明を受けながらの工場見学も楽しめる。

今後の展望と会期

伊藤社長は「来場者に工場や地域の魅力を知ってもらうのはもちろん、働く社員の士気向上につながることも期待したい」と語り、「来てもらえれば、必ず『想像していたのと違う』と思ってもらえるはず。私自身もそうだった」と展示内容に自信を見せた。

会期は31日まで。個別の入場チケット(1か所880円)のほか、複数の工場を巡るバスツアーも用意されている。詳しい内容や問い合わせは、芸術祭公式サイトから。