小泉防衛相の「年金80歳」発言、8年前の講演が再拡散 誤解招く背景は
小泉防衛相の「年金80歳」発言、8年前の講演が再拡散

小泉進次郎防衛相が老齢年金の受給開始年齢を「80歳」に引き上げると発言したかのような言説が、SNSで広がっている。だが実際には、60~80歳の間で自由に選べるようにしてはどうかという趣旨で、しかも8年前の発言だ。同様の拡散は2年前にも起きている。

SNSで拡散した「年金80歳」発言

8月下旬、X(旧ツイッター)に「年金支給は80歳からって!? 死んでしまうだろ!」との文章がポスト(投稿)された。投稿で紹介している小泉氏の発言は、「我々は、受給開始年齢は80歳でもいいのではないかと考えている。60~80歳の間であれば、受給開始年齢は自分たちで決められるという考え方である」といった内容だ。

投稿には小泉氏の会見動画も付いていて、発言はいかにも動画の書き起こしのように読める。だが、実は動画にそうした発言はない。それでも、「80歳からの受給開始は自民党の国会議員限定でお願い致します」「裏を返せば『シぬまで年金払わねーよ』と言ってるワケだ」などのリプライ(返信)が連なった。

Pickt横長バナー — Telegram用の共同買い物リストアプリ

投稿は9月18日時点で751万回以上表示され、リポスト(再投稿)は6200件を超える。

発言の起点は8年前の講演

添付されていた動画は、小泉氏が2024年9月6日に自民党総裁選への立候補を表明した際のものとみられる。政治改革について言及した場面を切り取ってつなげられた20秒間の動画で、年金には触れていない。

小泉氏のオフィシャルブログをさかのぼると、18年12月19日付の投稿に行き当たる。タイトルは「【講演書き起こし】平成のうちにやるべきこと~人生100年時代の社会保障と国会改革~」。2カ月前にあった講演で「受給開始年齢は80歳でもいいのではないか(後略)」という引用部分と同じ発言が確認できる。

複雑な制度変更と繰り返される拡散

そもそも年金の受給開始年齢は、複雑な制度変更が繰り返され、たびたび後ろ倒しになっている。厚生年金は54年の法改正で、それまで男女とも「55歳から」だったのを、男性のみ「60歳」へと段階的に引き上げ。さらに85、94、00年の改正を経て男女とも「65歳」に決まり、この時点で「60~64歳」に前倒ししての減額受給もできるようにした。

04年の改正では「60~70歳の間」とし、前倒しだと減額、後ろ倒しだと上乗せ、という仕組みが整った。国民年金は長年「60~70歳の間」で選べていたため、この時点で二つがそろったことになる。さらに20年の改正で、どちらも「60~75歳の間」となり、75歳までの後ろ倒しができるようになった。こうした変更の繰り返しの背景にあるのは平均寿命や定年の延長だと国は説明する。

小泉氏の8年前の講演は、受給開始が「60~70歳」だった時期のものだ。小泉氏は当時、自民党の厚生労働部会長に内定しており、選択の幅を「80歳まで」に広げる考えを示したわけだ。だが、Xでは24年9月にも、小泉氏の「80歳でもいいのでは」発言を引き合いに、別のアカウントが「貰(もら)う前に死んじゃうってば」と投稿。867万回以上表示された。

繰り返し拡散される背景

生活経済ジャーナリストの和泉昭子さんは「少子高齢化が進む中、年金制度を当てにできるのかという不安感が広がっていることが背景にある」と指摘する。

最近では、今の生活を犠牲にしてまで「将来のために」と投資に充てる「NISA貧乏」という言葉も生まれた。和泉さんは「『国は信用できない』『老後の資金は自分で確保しなければ』と考える人が増えていることの裏返しではないか」と話す。

Pickt記事後バナー — 家族イラスト付きの共同買い物リストアプリ