史上初の3カ国共催となったサッカーワールドカップ(W杯)北中米大会は、熱戦の裏で様々な騒動に揺れた。トランプ政権下の米国ではイラン代表への移動制限など政治が影を落とした。SNS上では人種差別的な投稿が批判を浴び、チケット価格の高騰は論争を呼ぶことになりそうだ。
開幕、抗議デモで一部が暴徒化
今大会は大規模なデモが繰り広げられる混乱の中で始まった。6月11日、メキシコ市で開幕戦が行われ、会場のすぐ横では政府への不満などを訴える労働組合や市民団体の抗議デモに大勢が押しかけ、一部が暴徒化して警官隊と衝突した。
なかでも公立学校の教職員組合によるデモは、「解決がなければ、ボールは転がらない」とのスローガンを掲げ、大会を妨害すると圧力をかけていた。「W杯はどうなってしまうのか」。市内では開幕当日の朝まで、そんな話題でもちきりだった。
いったん開幕すると、世界唯一となる3度目のW杯開催にメキシコ中が沸いた。政府は各地に巨大スクリーンを設置。代表チームはベスト16まで勝ち進み、パブリックビューイングが行われた首都中心部の広場は市民で埋め尽くされた。
イラン初戦、行動制限に憤る選手
イランの代表チームは紛争の相手国・米国で試合に臨んだ。試合前日の入国を余儀なくされるなど異例の行動制限を受け、選手は憤った。イラン代表は、当初予定していたよりも早い段階で米国入りするよう求められ、移動の自由が大幅に制限されたという。
元イラン代表監督のアリレザ・ゴトビ氏は「政治的圧力が選手のパフォーマンスに悪影響を及ぼした」と語り、イラン選手たちが不公平な扱いに苦しんだ実情を明かした。
SNS上の差別投稿とチケット高騰
SNS上では、一部の選手や審判に対する人種差別的な投稿が相次ぎ、批判が高まった。大会運営側は迅速な対応を約束したが、根本的な解決には至っていない。
また、チケット価格の高騰も大きな論争を呼んでいる。公式販売価格に比べ、転売市場では数倍から数十倍の値がつくケースもあり、多くのファンが高額な転売チケットを購入せざるを得ない状況が発生。公正な観戦機会の確保が課題として浮上している。
大会は熱戦が繰り広げられた一方で、政治介入や社会問題が色濃く反映された異例のW杯となった。



