1984年ロサンゼルス五輪の体操男子種目別鉄棒で10点満点の金メダルを獲得した森末慎二さん(69)は、引退後タレントとして活躍した後、沖縄県・宮古島で天丼店「みゃ~く商店」を営んでいる。自然豊かな島で1年の大半を過ごし、来店客と触れ合いながら充実した日々を送っている。
天丼店「みゃ~く商店」の営業と人気
タレントの仕事で島を離れる時を除き、営業日の週5日はほぼ店に立つ。調理から接客、皿洗い、記念撮影までこなし、「帰宅すると気絶したように眠る」と笑う。2018年10月に宮古島市の市街地にオープンした。店名の「みゃ~く」は「宮古」などを意味する地元の言葉。昼時に営業し、準備した約50食が閉店前に売り切れることもある。コロナ禍で客足が途絶え半年ほど閉店した時期もあったが、経営が軌道に乗った現在は行列ができる活況。島外からの常連客もいて、「天丼を食べると『宮古島に来た』と思える」と言ってもらえることが励みになっている。
体操選手からタレントへ、そして新たな挑戦
岡山・関西高で本格的に体操を始め、日本体育大時代はけがに泣かされたが、実業団の紀陽銀行で頭角を現し五輪出場を果たした。ロス五輪では種目別鉄棒で金、跳馬で銀、団体で銅を獲得。発熱のアクシデントを乗り越えての栄冠だった。翌年28歳で現役引退し、タレントに転身。スポーツキャスターやバラエティー番組で親しみやすい人柄と笑顔で人気を博し、多い時は週5、6本のレギュラーを抱えた。しかし40歳を過ぎると仕事が減少。アスリート出身タレントの先駆けだったが、同様の経歴を持つタレントが珍しくなくなっていた。
島での生活と天丼へのこだわり
多忙な時期でも趣味のダイビングやゴルフで沖縄を訪れ、特に宮古島の美しい海と人の温かさに魅了され、島に家を建てた。芸能界の仕事が減り、「妻が働いているのに自分は家で何もせず終わる日もあった」という生活を変えようと、還暦を過ぎて島で働くことを決意。目をつけたのは島で養殖されている車エビ。島外で流通する人気食材だが、広く認知されていなかったため、「このエビで島の魅力発信に貢献したい」と考え、友人や料理人と相談の上、天ぷらにすることにした。エビの足を残すなど仕込みを工夫し、プリプリの食感と香ばしさを加えた。丼に注ぐだしの調合は「企業秘密」という。
充実した現在と未来への思い
妻や息子が島に来ると一緒にゴルフを楽しむなど、家族との時間も含め今の生活に張り合いがある。「体操界、芸能界ではしたいことをさせてもらった。必要とされなくなったなら、新たなことに挑戦すればいい。毎日が本当に幸せ」と語る。さわやかな笑顔はあの頃のまま。女子プロゴルファーの葭葉ルミさんは「勝負の世界で生きてきた方だが、柔らかな笑顔が印象的で思いやりがある。向上心に年齢は関係ないと勉強させられる」とコメント。今年4月に宮古島で天丼を食べ、「車エビはおいしく、島野菜なども使って栄養バランスにも配慮していると感じた。好きな場所で好きなことをできる森末さんがうらやましい」と語った。



