Jリーグを目指さない――。福島県いわき市をホームとする「いわきFC」は、このユニークなコンセプトでスタートしたプロサッカーチームだ。勝利至上主義に与しないとしながらも、社会人リーグから毎年のように昇格を繰り返し、現在はJ2に所属する。その真の目的は、スポーツという「ビジネス」の可能性を示すことにあるという。オーナーの安田秀一氏(56)に、その理念と被災地での活動について聞いた。
スポーツビジネス市場の日米格差
安田氏は2015年、運営会社を立ち上げ、社会人リーグ所属のいわきFCの運営を引き継いだ。当時、米国のスポーツアパレル「アンダーアーマー」を日本で展開するドーム社を経営していた安田氏は、日米のスポーツ市場の規模に着目した。「日本のスポーツ市場は4兆~5兆円程度だったが、米国は50兆円規模で10倍の開きがあった。人口は米国が日本の2.5倍ほどで、GDPでもそこまで大きな差はなかった」と語る。
この差の原因として、日本では「スポーツで金稼ぎはだめだ」という意識が根強いことを挙げ、「スポーツビジネスの可能性を体現できるチームがなかったので、自らやろうと決意した」と振り返る。
被災地・いわき市を選んだ理由
チームの本拠地としていわき市を選んだ背景には、2011年の東日本大震災がある。安田氏は「震災後、いわき市は復興のシンボルとしてスポーツの力を示せる場所だと考えた」と説明する。いわきFCは、単なるサッカークラブではなく、地域活性化のプラットフォームとして機能することを目指している。
安田氏は「被災地でスポーツビジネスが成功すれば、他の地域にも波及効果がある」と強調。チームの収益を地域に還元することで、持続可能な地域創生モデルを構築したい考えだ。
勝利至上主義に頼らない成長
いわきFCは「Jリーグを目指さない」という独自路線を掲げながら、着実に結果を残してきた。社会人リーグからJFL、そしてJ3、J2へと昇格を果たしたが、その過程で勝利だけを追わない姿勢を貫いている。安田氏は「勝利は手段であって目的ではない。重要なのは、スポーツを通じて地域に価値を生み出すことだ」と語る。
チーム運営では、育成システムや地域連携に力を入れ、スタジアムを地域のコミュニティ拠点として活用。収益の多角化にも取り組み、スポンサーシップやグッズ販売、イベント開催などで収益を上げている。
スポーツビジネスの未来
安田氏は、日本のスポーツ市場がまだ成長余地を残していると指摘する。「米国のようにスポーツが一大産業となるためには、ビジネスとしての成功事例が必要だ。いわきFCがそのモデルケースになりたい」と意気込む。
被災地から始まった挑戦は、今や多くの注目を集めている。安田氏は「スポーツには人を動かす力がある。その力をビジネスと結びつけることで、地域社会に新たな可能性を示したい」と語り、今後の展望に期待を寄せた。



