縁のない日南市でバスケ指導、最初は2人だけ…クラブチームに発展し全国大会出場へ
縁のない日南市でバスケ指導、最初は2人だけ…クラブチームに発展し全国大会出場へ

宮崎県日南市で地域おこし協力隊としてバスケットボール指導を始めた元Wリーグ選手の加藤夕貴さん(34)が、隊の活動終了後も指導を続け、チームを全国大会出場に導いた。「バスケを通して人生を豊かにしてほしい」と願い、日々子どもたちと向き合っている。

最初は2人だけだったスクール

9月中旬、日南市の体育館には女子中学生らが汗を流す姿があった。加藤さんは「思いっきりやって」「ナイスプレー」と声をかける。

東京都出身の加藤さんは、中学1年でバスケを本格的に始め、「できないことをできるようになりたい」と夢中になった。強豪の明星学園高を経て専修大時代には日本代表としてユニバーシアードに出場。その後、バスケ女子Wリーグの富士通レッドウェーブに入り、2017年までプレーした。

引退後は語学留学でカナダとオーストラリアに滞在。帰国後の進路を考えていた時、地域おこし協力隊の参加者募集を知り、地方での生活に興味を抱いた。スポーツ関連で隊員を募っていた日南市と北海道のうち、縁のない西日本として日南市を選び応募した。

古い体育館を再生しコートを制作

3年間の活動後は東京に帰るつもりで、2020年7月に着任。バスケを教えることになり活動場所を探すと、市の担当者から「誰も使っていないし、古いけど」と紹介された体育館があった。つり下げ式のリングを見て「ここがいいです。きれいにして使います」と決め、床を磨きラインを引いてコートを整備した。

知り合いもいない土地でのスタートは困難を極め、最初のスクール参加者は2人だけだった。「どうせ東京に帰る」と言われたこともあったが、丁寧な指導と真剣な姿勢が徐々に伝わり、活動最終年には約100人が通うまでに成長した。

クラブチームが誕生し全国大会へ

2024年、スクールを発展させる形で中学生女子のクラブチーム「WYNIX BASKETBALL(ウィニックス バスケットボール)」を設立し、日南市に残ることを決めた。チーム名は「With You from ZERO」の頭文字とゼロを意味する「NIX」を組み合わせたもので、ゼロから打ち込む楽しさを学んでほしいとの願いが込められている。

現在は日南、都城両市で練習し、中学生11人が所属。2025年には全国大会のU15クラブバスケットボールゲームスに出場し、「発展したな」と実感した。

加藤さんがバスケで一番好きなのは人とのつながりだという。小学6年の頃にテレビで見た女子選手のプレーに魅了され、「かっこいい、こんな人になりたい」と競技を始めた。成人後、入団を誘ってくれた富士通レッドウェーブの監督は、かつてあこがれたその元選手だった。「そんなことがあるんだな」と出会いに不思議さを感じた。

「バスケを通して多くの人に出会うことで、人生が豊かになるきっかけを作ってほしい」。その手助けができればと、今日も子どもたちと一緒に汗を流している。