第108回全国高校野球選手権大会は22日、決勝が行われ、智弁和歌山が健大高崎に4-3で勝利し、夏の頂点に立った。試合を決めたのは八回裏の攻防だった。
八回表に逆転された智弁和歌山、直後の攻撃で同点に
八回表、健大高崎が逆転2ランで試合をひっくり返した。球場のムードは健大高崎に傾いたかに見えた。六回から無失点投球を続けていた健大高崎の2年生左腕・北田莉玖は拳を握り、「この流れで勝つ」と思ったという。しかし直後の守りで、「厳しく、厳しく」と意識しすぎた結果、先頭打者に死球を与えてしまう。
対照的だったのは、春夏通算45度の甲子園出場を誇る智弁和歌山の選手たちだ。打席の楠本龍生は劣勢をものともせず、「観客は全員、うちが負けると思っていたとはず。でも、地方大会からこんな展開は何度も経験してきた」と振り返った。バントが2球ファウルになっても関係なく、「もっときつい試合もあった。全然いけるやろ」と話し、低めをすくって中前へ運んだ。次打者の犠打で1死二、三塁と好機を広げた。
流れが変わり始める中、打席に入った川原一将は初球、スクイズを試みるもファウル。相手捕手の負傷で試合が中断する間、仲間からは「緊張しすぎや」と声をかけられた。川原は「引きずらずに切り替えられた」と語り、再開後にもう一度スクイズを敢行。投前に絶妙に転がし、犠打野選を誘って同点に追いついた。
魔曲に惑わされた健大高崎、決勝点につながる暴投
アルプス席から流れる「ジョックロック」のボリュームがさらに上がる中、なお1死一、三塁から継投した健大高崎の3番手・石田翔大は「智弁さんの応援に気を取られてしまった」と話した。直球のサインにスライダーを投じてしまい、外角に大きくそれた暴投が決勝点につながった。
夏の頂点を決める大舞台で、平常心を保ったのは智弁和歌山だった。わずかな心の揺れが、勝敗を染め分けた。
代打・松本虎太郎の犠打が逆転劇を演出
ベンチから見つめた智弁和歌山・中谷仁監督は、松本虎太郎の犠打を「逆転まで見えた、魂のこもった素晴らしいバントだった」とたたえた。1点を追う八回無死一、二塁、松本は代打で打席へ。ベンチからのサインは「送りバント」で、初球、高めの直球を投前に転がし、1死二、三塁として逆転劇を演出した。
終盤の勝負どころ、4万4700人の視線が一点に集まる打席でも、越えてきた起伏を思えば勇気が湧いた。松本は1年夏から甲子園に出場してきたが、この春、あまりの不調ぶりに「主将をやめたい」と監督に自ら申し出た。「一番思いが強いのは虎太郎」と背中を押され、踏みとどまった。6月末には腰の手術を受け、和歌山大会では先発を外れた。監督の「虎太郎が優勝旗を持っている姿、想像しているから」という言葉が支えだった。
この日の1打席は「監督と心の中で会話できていた」。優勝旗を手に、思わず笑みがこぼれ、「ここまでやり続けてきてよかった」と話した。



