2024年7月の山形県新庄市での豪雨災害で、救助に向かう途中にパトカーごと流され殉職した県警警察官・玉谷凌太さん(当時26)の父・荘一さん(58)と母親(53)が、発生から2年を経て初めて報道機関の取材に応じた。2人は「最期まで職務を全うしたことを誇りに思う。災害時に多くの人が自分の身を守れるように、凌太のことを忘れないでほしい」と語った。
優しい刑事だった玉谷さん
同県寒河江市にある実家の仏壇の前には、「信じられない気持ちでいっぱいです 素敵で優しい刑事さん」と書かれたメッセージカードが飾られている。捜査で接した関係者とみられる人から、供花とともに届いたという。両親は「誰にでも優しい子だった」と振り返る。
2024年7月25日午後11時過ぎ、「車が流され脱出できない」との110番を受け、玉谷さんと同僚の2人は現場の最上川支流にかかる橋付近へパトカーで向かったが、連絡が途絶えた。翌日、近くの水田で逆さまになったパトカーが発見され、2人の遺体はさらに下流で見つかった。出動時に救命胴衣を持っていなかったという。
幼い頃からの夢、警察官に
玉谷さんは保育園の頃から警察官を夢見て、高校卒業後の2017年に県警に入り、酒田署では刑事1課を経験。同僚から「被害者に寄り添って話を聞ける優しい刑事」と頼られた。2024年4月から新庄署の駐在所に移り、担当地域の住宅や店舗をこまめに回っていた。
親思いで仕事の合間を縫って実家に顔を出し、食事の際は「うっまーい」と声を上げて食卓を明るくした。亡くなる10日ほど前に実家を訪れた際は、「パパとママの子で本当に良かった」と感謝の言葉を口にし、「また帰ってくるから」と笑顔を見せたのが最後の姿となった。
組織の教訓と対策
県警は殉職を受け、現場に出る可能性のある警察官全員分の救命胴衣を配備するなど装備を拡充。水害時の初動対応の要領を策定し、救命胴衣着用状態でパトカーを運転する訓練を実施している。警察庁も2024年度補正予算で救命胴衣約9400着を国費で購入し、全国に配分した。
荘一さんは「訓練を積むとともに、上司が的確な指示を出せるよう、2人の殉職を組織内で伝え続けてほしい」と願っている。
東北で相次ぐ記録的豪雨
東北地方では近年、過去に経験のない記録的豪雨が頻発している。2023年7月は秋田市で48時間降水量が415.5ミリに達し、市内が大規模に冠水。秋田県内で1人が死亡した。翌年7月には山形県新庄市などで48時間降水量が400ミリを超え、殉職警察官2人を含めて秋田、山形両県で5人が亡くなった。
最大の原因は温暖化による海水温の上昇だ。台風が東北まで勢力を保ったまま北上し、線状降水帯の発生も増えた。気象庁データを分析すると、2011年以降、204か所の観測地点のうち7割近い138地点で1時間当たり雨量が過去最高を更新していた。
豪雨災害に詳しい東北大の風間聡教授(土木工学)は「頻発する記録的豪雨に治水対策が追いついていない。重度の危険が予測される地域では、集団移転を行って空いた土地を遊水地にするなど踏み込んだ対策も必要だ」と話している。



