ロケ誘致や命名権で「稼ぐ力」強化、国公立博物館・美術館の赤字対策
ロケ誘致や命名権で「稼ぐ力」強化、国公立博物館・美術館の赤字対策

国や自治体の財政難が続く中、国公立の博物館や美術館が集客・収益向上に力を入れている。施設の維持や存続に向けて、ロケ誘致やネーミングライツ(命名権)の導入など、あの手この手で「稼ぐ力」を強化している。

コロナ禍を機に景観生かしたロケ誘致

東京湾を望む森の一角に立つ神奈川県横須賀市営の横須賀美術館は、2021年からロケの誘致に注力してきた。きっかけはコロナ禍で、2007年度の開館当初は16万人に上った来館者が2020年度には5万人を割り込んだ。打開策として目を付けたのが、景観を生かしたロケ誘致だった。

館内外で商業撮影が可能なスポットをホームページで紹介したところ、2023年に俳優の綾瀬はるかさん出演の「ユニクロ」のCMに使用されるなど認知度が向上。2024年度のロケ利用数は21件と2020年度の4倍超に増え、ロケ地巡りの来館者も増えて2024年度の来館者は過去最多の30万人に達した。

市美術館運営課の下田哲央課長は「晴れの日は屋上広場から青い空と海を一望でき、ドラマや音楽などの映像作品のロケ地として人気が高まっている」と話す。一方で、常設展の入館料を450円に抑えていることもあり、赤字は年3億円以上と苦しい台所事情が続く。下田課長は「ロケを通じて展示品の魅力にも目を向けてもらい、新たなファンを取り込みたい」と意気込む。

財政難は深刻、文化庁が自己収入目標を初提示

博物館や美術館の財政状況は厳しさを増している。日本博物館協会が今年3月に公表した博物館総合調査(速報版)では、全国約2200施設の77%が「財政面で厳しい」と回答した。レジャーの多様化による来館者減少に加え、公立館では予算削減にも拍車がかかる。

こうした中、文化庁は2月、国立博物館・美術館を運営する三つの独立行政法人に対し、2030年度までに展示事業費の65%以上を各館の自己収入で賄うよう求め、未達成の場合は閉館を含む再編の対象にするとの方針を初めて示した。これを受け、公立館でも「収益性が重視されるのでは」との懸念が高まっている。

命名権やクラウドファンディングで新たな収入源

新たな収入源の確保に動く施設もある。相模原市立博物館は7月、きらぼし銀行を傘下に持つ「東京きらぼしフィナンシャルグループ」とネーミングライツ契約を結び、館内のプラネタリウムの愛称を「きらぼし銀河プラネタリウム」とした。このプラネタリウムは昨年、10億個の星を高精細の8K映像で映し出せる「世界初」(同館)の設備を導入。5年間の命名権料計1500万円は改修費に充てる。同館の河本雅人さん(51)は「企業の発信力で、当館になじみのない市外の人へのPRにもつながれば」と期待する。

クラウドファンディング(CF)の利用も拡大している。大手CFサイト「READYFOR(レディーフォー)」では、2023年に国立科学博物館(東京)が目標の1億円を上回る9億円超を集めたこともあり、博物館・美術館による寄付募集が増加。昨年は58件に上り、総額4億4400万円の寄付が集まった。

約9万本の映画フィルムを保存する国立映画アーカイブ(東京)が今年6月に始めた運営資金を募るCFは、2か月足らずで目標の1億円を達成。5500人以上が寄付し、栩木(とちぎ)章館長は「映画の保存と継承を担う館の役割に大きな期待が寄せられていると感じる」と感謝する。

READYFORの担当者は「コロナ禍を機に、お気に入りの博物館や美術館を支えたいという機運は高まっている。継続的な支援につながるよう、CFサイトとしてもサポートしていきたい」としている。

専門家「独自の財布」で再投資の仕組みを

和光大の平井宏典教授(博物館経営)は「博物館の価値は収益性だけで測れるものではないが、存続できなければ収集保存、調査研究、展示教育といった本来の使命も果たせない。中小規模の公立館は基金などの独自の『財布』を持ち、得た収入を新たな活動に再投資できる仕組みを検討すべきだ」と指摘している。