ジャグリングで世界記録を持つ神戸大農学部4年の松崎晴也さん(22)が、10月の3日間、大阪・天満天神繁昌亭の通常興行(昼席)に出演する。子どもの頃から磨き続けてきた技の数々は神業の域に達しており、松崎さんは「出るからには、客席をたくさん沸かせたい」と誓う。
落語家の父から始めたジャグリング、7歳で5ボールを習得
松崎さんは、落語家の林家笑丸さん(52)の長男。3歳の時、笑丸さんが家でジャグリングに興じる姿を見て始めた。みるみる上達し、五つのボールを使う技を7歳でこなせるようになった。その腕前から、笑丸さんの師匠・林家染丸さん(76)が「ハッピーはるや」の芸名を授けてくれた。
実は、小学生の時に何度か繁昌亭の昼席に出演したことがある。最初は小学2年で8歳だった2013年。最年少出演者の「天才ジャグリング少年」として注目を浴びた。最後は小学5年の時だったという。「お客さんの拍手が純粋にうれしく、楽しかった」
大学でサークル入りし再熱、今年7つの世界記録を樹立
中学、高校時代は「勉強の息抜き程度」で、趣味として楽しんでいたが、神戸大2年の時にジャグリングのサークルに入ったのがきっかけで再び練習に打ち込むようになった。練習はもっぱら自宅で、多い日は5時間ぐらい費やしている。
ジャグリングには、リングやハット、スティックなど様々な道具があるが、松崎さんはボールを操るのが得意だ。腕を交互に交差して複数のボールで流れるような曲線を表現する「ミルズメス」など多彩な技を持っている。ジャグラーが投稿した動画を審査し、世界記録を認定する国際的なウェブサイト「Juggle Wiki」によると、松崎さんは今年、七つの世界記録を樹立した。中でも、「8個のボールを使ったミルズメス10回キャッチ」に成功し、手応えを感じたという。
研究と両立、父の支えで約10年ぶりの舞台へ
大学では、農学部で稲の光合成に関わるたんぱく質を研究。別の植物の遺伝子を導入して光合成の効率を高め、米の収量を上げることができるという。大学卒業後は、大学院に進学して研究を続ける予定で、ジャグリングも継続する。「勉学で身につけた論理的思考が、どのような軌道や角度でボールを投げれば技が成功するかを考えるのに役立っている」と語る。
笑丸さんが出演する落語会などに時折、呼ばれるようになり、繁昌亭から約10年ぶりに声がかかった。昼席への出演は10月6、8、11日。父の笑丸さんは、技の構成や合間のしゃべくりの台本を考えて息子をサポートしており、「世界に通用する技を持つ強みをいかしてほしい」と話す。
繁昌亭の元支配人で、現在はアドバイザーを務める恩田雅和さん(77)は「将来、どんな道に進んでも、好きなことを突き詰めて最高の舞台に立ったことが人生の糧になるだろう」とエールを送る。松崎さんは「子どもの頃と違い、繁昌亭の舞台に立つ重みを感じている。失敗できないという緊張もあるが、大技を成功させて客席を盛り上げたい」と話す。
天満天神繁昌亭は大阪市北区の大阪天満宮の隣接地にある上方落語の定席。2006年9月に大阪で戦後途絶えていた落語の常設小屋としてオープンし、今年で20周年を迎えた。上方落語協会が運営し、ほぼ毎日、昼と夜の興行を実施している。入場者数は今年8月末で累計236万人に上り、上方落語の「聖地」として定着した。