大阪市で、橋の利活用や清掃などに民間活力を取り入れる動きが進んでいる。江戸時代に「なにわ八百八橋」と称されるほど橋が架かり、その多くを町人が管理していたことに由来する取り組みだ。魅力向上に協力する団体側は「人と人をつなぐような橋にしていきたい」と意気込む。
モデル4橋でイベント開催、人通り増加の効果
土佐堀川に架かる錦橋(北区・西区)周辺の企業や大学などでつくる「加島屋橋協議会」の吉田一正副代表(49)は、「以前はごみや汚れもあったが、取り組みを始めたことで人通りが増えてきた」と活動の手応えを語る。4月に発足後、有志で橋を清掃してきたほか、橋上でビアガーデンイベントを開くなどしてにぎわい作りに力を入れてきた。
吉田さんは錦橋のたもとに社屋を構える大同生命保険に勤務する。協議会の名称には同社の礎を築いた江戸時代の大坂の豪商「加島屋」を冠した。加島屋の拠点だった場所は錦橋のすぐ近くにあり、吉田さんは「昔から町人が橋を支えてきた。民間主体で人と人をつなぐような橋のにぎわい作りに貢献したい」と意欲を示す。
大阪の橋の歴史と維持管理の課題
大阪では江戸時代を中心に川が交通の要となり、経済発展を支えた。土地の造成や水運を目的に道頓堀川など多くの堀川が開削され、近世は約200の橋があった。そのうち幕府が直接管理する「公儀橋」は12橋だったのに対し、大半は町人や商人が生活、商売のために自ら築き、費用を負担して管理した「町橋」だった。
市内には現在、市管理の橋は763橋あり、その街並みは水都・大阪の象徴となっている。一方、点検や補修などの維持管理に年約30億円かかり、落書きやごみのポイ捨てが景観を損ねていることが課題となってきた。
現代版「町橋」、2028年頃に民間委託へ
市は橋のにぎわい創出や日常的な維持管理を民間に担ってもらうことを念頭に、2023年に中之島ガーデンブリッジ(北区)と水晶橋(同)、錦橋、本町橋(中央区)の4橋をモデル橋に定めた。企業や大学、まちづくり団体と実行委員会を発足させ、定期的なイベントを通じて集客力や収益性、来場者の安全確保策の検証を重ねてきた。
こうした活動を経て、市は今年5月、橋の補修などは市が継続して担い、2028年頃をめどに橋上のイベント運営や緑化、ごみ拾いといった日常的な橋の維持管理は公募で選ぶ民間団体が行う計画をまとめた。活動資金はイベントなどの収益で賄う想定で、市は現代版「町橋」と位置付けている。
実行委員会は今月14~30日、中之島ガーデンブリッジ、水晶橋、錦橋での橋上ライブや特産品マルシェ、ビジネス交流会などを開催する。4橋の活用がうまくいけば、市は2030年以降、官民連携の対象を他の橋にも広げる方針だ。横山英幸市長は1日の記者会見で「橋によって地域がつながっている。清掃活動やにぎわい作りを民間と一緒にやっていくことは重要だ」と述べた。