肱川氾濫訴訟で遺族の請求棄却、原告側は憤りと落胆を表明
肱川氾濫訴訟で遺族の請求棄却、原告側憤り

肱川氾濫訴訟で遺族の請求棄却、原告側は憤りと落胆を表明

2018年の西日本豪雨で発生した肱川の氾濫を巡る集団損害賠償訴訟において、松山地方裁判所が原告側の請求を棄却した判決が下された。これを受け、犠牲者の遺族らは憤りと落胆をあらわにし、国や自治体の対応を強く批判している。

判決後の原告側の反応と悲痛な声

判決が言い渡された18日、松山地裁の法廷では古市文孝裁判長が主文を読み上げると、傍聴席にいた原告らは静かにうなだれた。地裁前で報道陣に囲まれた弁護団の山中真人弁護士は、判決内容について不満を表明した。「判決には、情報伝達について『事後的に見れば遅かった』『改善の余地があった』との表現がある。そこを違法と判断するのが裁判所の仕事ではないか」と述べ、行政の対応に問題があったと指摘した。

原告団は松山市内で記者会見を開き、義母のユリ子さん(当時81歳)を亡くした西予市野村町の小玉恵二さん(67)が悲痛な思いを語った。「(国や市が)もっと人間味のある対応ができていれば、命を失うことはなかったのではないか」と訴えた。小玉さんは肱川の氾濫で妻(67)と避難したが、近くに住む義母を助けることができなかった。その後、引き継いだ畳店を守るため、避難所から店に通い、地元の再建に向けて畳を作り続けてきた。判決について、「義母の無念を晴らせなかった。控訴となれば頑張らなければいけない」と述べ、今後の闘いへの決意を示した。

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国と自治体の対応と専門家の見解

判決を受け、両ダムを管理する国土交通省四国地方整備局は、ウェブサイトにコメントを掲載。「国の主張が認められたと認識している。引き続き、適正な河川の管理を行っていく」と述べた。西予市の管家一夫市長は記者会見で、「市の主張について、裁判所の理解が示された」と評価しつつ、「教訓を胸に刻み、さらなる防災・減災体制の強化に全力を尽くす」と語った。大洲市の二宮隆久市長も、「市の主張が認められたものと受け止める。今後も防災・減災対策に取り組み、市民が安全に暮らせる町づくりを進める」とのコメントを発表した。

北九州市立大学の近藤卓也准教授(行政法)は、判決について次のように分析した。「災害では臨機応変な対応が求められるが、豪雨の予測が困難だとした上で、災害現場における(行政の)裁量をかなり重視した判決。西予、大洲両市の避難指示について、『事後的に見れば、改善の余地がある』と言及したのは、責任を認めなかったものの、対応に問題があったと指摘したかったからではないか」と述べた。

元東京高裁判事の升田純弁護士は、「過去の水害訴訟では『自然災害だから仕方がない』として、住民側の訴えが退けられる判決が多いが、今回は、8人が亡くなったことを重く受け止め、原告の主張を一つずつ丁寧に判断した印象を受けた。ダム管理を巡る訴訟は珍しく、管理責任のあり方について一つの参考になる」とコメントした。

事件の背景と今後の展開

この訴訟は、2018年の西日本豪雨で肱川の野村ダム(愛媛県西予市)と鹿野川ダム(同県大洲市)が緊急放流を行ったことを巡り、犠牲者の遺族ら31人が損害賠償を求めて提起したもの。判決では、行政の対応に改善の余地があったと認めつつも、違法性は否定された。原告側は控訴を検討しており、今後の司法判断が注目される。

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