「東大生は親から『勉強しなさい』と言われたことがない」という話を聞いたことがある親御さんは多いだろう。実際、ひまわり教育研究センターが現役東大生220名を対象に実施した2022年の調査では、「親から勉強しなさいと言われたことがない」と答えた東大生は全体の24%だった。一方で、「1日5回以上言われた」という東大生は13%にとどまった。
この結果を受けて、多くの教育系メディアは「子どもには勉強しなさいと言わず、自主性に任せたほうがいい」と結論づける。しかし、偏差値35から東大合格を果たした西岡壱誠氏(一般財団法人ドラゴン桜財団代表理事)は、この説明に疑問を抱いている。
「勉強しなさい」が効果的でない本当の理由
西岡氏は、漫画『ドラゴン桜2』の編集担当も務め、後天的に身につけられる「東大に合格できるくらい頭をよくするテクニック」を伝授する連載を担当。その内容を再構成した『なぜか結果を出す人が勉強以前にやっていること』は3万部を超えるベストセラーとなっている。連載第241回で、西岡氏は「勉強しなさい」と子どもに言うことの是非について新たな視点を提示した。
西岡氏は「最近、全国の子どもたちと親御さんを見ていて、『本当の理由はもっと別のところにあるのではないか』と考え始めている」と語る。その真因とは、単なる自主性の尊重ではなく、勉強の「質」と「効率」にあるという。
10時間勉強しても落ちる子、5時間で受かる子
西岡氏の周りにはさまざまなタイプの受験生がいる。1日13時間睡眠時間を削って勉強しているのに東大模試でD判定から動かない生徒もいれば、1日5時間しか勉強していないのにA判定を取る生徒もいる。勉強時間が長ければいい結果が得られるわけではなく、むしろ部活や課外活動で時間が限られているからこそ効率よく勉強できるケースもあるという。
「勉強時間が長ければいいというものではなく、むしろ『やめる判断』ができる受験生のほうが伸びる場合がある」と西岡氏は指摘する。「この参考書はもう自分には必要ない」「今日の問題は解けるようになったから繰り返さなくていい」「この単元は完璧だから別の弱点に時間を回そう」――こうした判断を自分で下し、勉強時間を効率的にしているという。
一方、伸び悩む子は「とにかく時間をかける」ことで安心しようとする。同じ参考書を5周も6周もしたり、すでにできる問題を何度も解き直したりする。やめどきがわからないため、10時間机に向かっていても内容はスカスカなのだ。
親の声かけは「量」から「質」へ
西岡氏は、親が「勉強しなさい」と言う代わりに、「今日の勉強、何点くらい?」と問いかけることを提案する。これは勉強の量ではなく、質や理解度に焦点を当てた声かけだ。親が勉強時間を管理するのではなく、子ども自身が効率を意識する習慣を身につける手助けをするのが重要だと説く。
実際、勉強時間と成績の相関は弱いというデータもある。西岡氏は「生まれつきの才能は不要」と断言し、後天的なテクニックで誰でも東大合格レベルの頭脳を獲得できると主張する。その鍵は、勉強の「やめどき」を見極める判断力と、限られた時間を最大限に活用する効率性にある。
西岡氏の分析は、多くの親にとって「勉強しなさい」と連呼するよりも、子ども自身の学習プロセスを尊重し、効率的な勉強法をサポートすることの重要性を示している。



