うつ休職7回の57歳に退職勧奨、人事の苦悩と優しすぎる制度の代償
うつ休職7回の57歳に退職勧奨、人事の苦悩

キャリア・教育 #「人事の裏側、明かします」人事担当マル秘ノート うつ休職7回の57歳に「退職」を促した人事の苦悩 "優しすぎる制度"が奪った30年のキャリアと会議室に響く男の涙<再配信> 7分で読める 公開日時:2026/06/20 09:00

うつ病で休職を繰り返した50代男性は…… *写真はイメージです(写真:mits / PIXTA) 萬屋 たくみ 会社員(人事部長) フォロー 1/4 PAGES

予期せぬ退職勧奨の重大ミッション

あれは、十数年前のこと。大手専門商社の人事部に転職して4年目を迎えた私は、ある朝、人事部長に呼ばれてこう切り出された。

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「萬屋くん、単刀直入で申し訳ないのだが……。生産管理部のAさんに、退職の道を選んでもらえるよう、話し合ってもらえないだろうか」

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「えっ! それは一体、どういうことでしょうか」

穏やかではない指示にひるんだ私は、とにもかくにも詳しい事情を聞かねばと前のめりになった。 すると部長は深くため息をつきながら、人事関連の資料を私の前に差し出した。

オリンピックのごとく復職する「伝説の男」

Aさんは57歳。入社以来30年近く、生産管理部一筋で働いてきたベテラン社員だった。しかし、そのキャリアは決して順風満帆ではなかった。なんと、うつ病による休職をこれまでに7回も繰り返していたのだ。休職期間は短いもので3ヶ月、長いものでは1年に及ぶこともあった。その度に復職しては再び休職するというパターンを、まるでオリンピックのように繰り返すことから、社内では「伝説の男」として知られていた。

部長が差し出した資料には、Aさんの休職歴と復職後のパフォーマンスが詳細に記されていた。復職後は一応仕事に戻るものの、すぐに体調を崩し、周囲に多大な負担をかけている実態が浮き彫りになっていた。

静まり返った会議室で57歳が流した大粒の涙

私は重い気持ちでAさんとの面談に臨んだ。会議室には私とAさんの二人だけ。静まり返った空間で、私は退職勧奨の意を伝えた。Aさんは一瞬、言葉を失い、やがて大粒の涙を流し始めた。「もう、頑張れないんですかね……」と絞り出すような声で問いかけるAさんに、私は胸が締め付けられた。

しかし、会社としてもこれ以上、休職と復職を繰り返す社員を抱え続けることは難しかった。周囲の社員の負担は限界に達しており、Aさん自身の健康を考慮しても、このまま続けることは得策ではないと判断されたのだ。

優しすぎる制度が奪った社員のキャリアと人生

Aさんのケースは、企業の「優しすぎる制度」が皮肉にも社員のキャリアと人生を奪ってしまった好例と言える。休職制度が整備され、復職しやすくなったことで、Aさんは何度も休職と復職を繰り返すことができた。しかし、その結果、彼は30年近くにわたって本来の力を発揮できず、周囲に依存する形でキャリアを積んできた。退職勧奨は、彼にとっては残酷な決断だったかもしれないが、長い目で見れば、彼自身が新たな人生を歩むためのきっかけとなるはずだ。

組織をより良くするための“黒子”として暗躍している、企業の人事担当にフォーカスする連載『「人事の裏側、明かします」人事担当マル秘ノート』。現役の人事部長である筆者が実体験をもとに、知られざる苦労や人間模様をお伝えしています。 連載12回目は、うつ病で休職を7回繰り返した57歳男性社員への、苦渋の「退職勧奨」についてお届けしました。

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