次期学習指導要領「わかりやすく」のはずが複雑化?元文科省官僚が違和感
次期学習指導要領「わかりやすく」のはずが複雑化?

次期学習指導要領の改訂をめぐり、現場の教師から「わかりやすく」という目標とは裏腹に、かえって複雑化しているとの声が上がっている。元文部科学省キャリア官僚で、現在は広島県総務局付課長や福山市教育委員会学校教育部参与を務める寺田拓真氏は、自身の違和感を率直に語る。

現行指導要領の課題と次期改訂の方向性

寺田氏によれば、現行の学習指導要領には二つの大きな問題がある。第一に、内容が複雑で読み解くのが難しいこと。第二に、「教える内容」が多すぎて、知識を活用する「使える」学力を育む時間が不足していることだ。これらの反省を踏まえ、次期改訂では「わかりやすく使いやすいもの」とすること、そして学校現場に「余白」を生み出すため教える内容を精選することが目指されている。

しかし、具体的な構造を示す図を見ると、従来の「見方・考え方」に加え、「統合的な理解」「総合的な発揮」といった新たな概念が追加され、より複雑な階層構造となっている。寺田氏も「最初に見た時、『わかりやすく使いやすい』はどこへ行ったのかと思った」と認める。

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小学校と中高で異なる課題

次期指導要領を理解するには、前回改訂以降の授業の変化を把握する必要がある。一般的に、「使える」学力を育むには知識のアウトプット活動が重要とされ、前回改訂では「主体的・対話的で深い学び」が強調された。しかし、その実態は学校段階によって異なる。

小学校では、グループ学習やペアトークなどの活動が増加したものの、「活動あって学びなし」の状態が目立つ。寺田氏は「サッカーで言えば、ミニゲーム中心でドリブルやパスの基礎練習が乏しい授業」と例える。動機付けには「できた、わかった」という経験の積み重ねが重要だが、集団活動が増えた結果、個人で考える時間が減少。一部の児童だけが活動を引っ張り、他の児童は参加しない状況が生まれ、基礎的な内容の定着がおろそかになり、学力ややる気の格差が拡大している。

一方、中学校・高校では「転移」の問題が深刻だ。学んだ知識を異なる文脈で活用する力が不足しており、これが次期指導要領で「統合的な理解」と「総合的な発揮」が追加された背景にある。

「統合的な理解」と「総合的な発揮」の意図

寺田氏は、複雑に見える構造にも理由があると解説する。「統合的な理解」は、個別の知識を相互に関連付けて深く理解することを促し、「総合的な発揮」は、複数の知識や技能を組み合わせて現実の課題に対応する力を育てることを意図している。これらは、中高における「転移」の問題を解決するための方策だという。

しかし、現場の教師からは「これまでの『見方・考え方』だけでも理解が難しかったのに、さらに概念が増えて混乱する」との声も聞かれる。寺田氏は「目的は理解できるが、現場に浸透させるには十分な研修とサポートが必要だ」と指摘する。

今後の展望

次期学習指導要領の改訂は、2026年度以降の全面実施を目指している。文部科学省は「わかりやすく使いやすい」を掲げるが、実際の運用には課題が山積みだ。寺田氏は「現場の先生たちが本当に使いやすいと感じるものにするためには、改訂のプロセスに現場の声をより反映させるべきだ」と提言する。

教育現場の混乱を防ぐためには、国と地方自治体、学校が連携し、丁寧な説明と段階的な導入が求められる。次期指導要領が真に「使える学力」を育むものとなるか、今後の動向が注目される。

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