上野原市上野原の加藤忠亮さん(79)は、今春から県立都留高校(大月市)の定時制に通う「現役高校生」だ。「毎日の勉強が人生を豊かにしてくれている」と卒業を目指し、勉学にいそしんでいる。
孫より若い同級生と机を並べる
16日夕、同校の教室で英語の授業が始まると、自分の孫よりも若い10歳代の同級生らと机を並べ、真剣な表情でアルファベットが並ぶ問題に向き合い、ペンを走らせた。平日夕方から4コマの授業を受け、上野原市の自宅に帰るのは午後10時近く。それでも「休まず通い、今のところは皆勤賞ですよ」と胸を張る。
60年以上前、一度は県内の高校の機械科に通ったが、「けんかに明け暮れ、何度も停学となり嫌になった」と退学した。それでも実家の機械部品工場でまじめに働き、34歳で従業員約40人を束ねる社長に。上野原市商工会の理事や上野原市議会の議長も務め、地域にも貢献してきた。
大病を乗り越え、再び学びの道へ
順風満帆な人生を過ごしてきたが、議員を引退し、会社もたたんだ後の2019年、歩けないほどの腰の痛みで病院に駆け込むと、前立腺にがんが見つかった。ただ、「自分の母親よりも先に逝くわけにはいかない」と前を向き、約2年間の抗がん剤治療でがんをほぼ克服してみせた。
大病を乗り越え、24年に母をみとると「やり残したことはなかったか」と自身に問いかけた。浮かんだのが、高校を卒業できなかったという後悔だった。「もう一度、勉強してみたい」と家族に相談すると、全面的に応援してくれた。長女が買ってきた参考書で受験勉強に励み、大学院生だった孫の指導を受けて面接の練習をした。妻・弓子さん(77)も温かく見守ってくれ、今年3月に合格し、念願だった学び舎の門をくぐった。
「分かるまで丁寧に教えてくれる先生のおかげで、勉強が楽しい」
60年ほど前とは様変わりし、当時は男子生徒が受けるのが難しかったという家庭科の授業にも新鮮な気持ちで臨んでいる。同級生はもちろん、どの教師よりも年配だが、分からないところがあれば素直に質問をしている。「苦手」という英語も単語帳を手作りして発音練習を繰り返し、物覚えが悪くなったと毎朝1時間の復習も欠かさない。
「分かるまで丁寧に教えてくれる先生のおかげで、勉強が楽しい」と加藤さん。4年間での卒業を目指しており、「毎日少しずつ成長して、いつか英語で外国の人と話せたら最高だね」と夢を描く。いくつになっても、常に挑戦し続ける。それこそが、人生を謳歌する秘訣なのかもしれない。



