肺がんで余命1年を宣告された元大阪府立高校教諭の清水俊史さん(66)が、大阪や北海道の学校などで講演を続けている。約40年の教師生活で「死にたい」という生徒を多く見てきた。自らが死を前にした今、「自己肯定感を積み上げ、楽しく生きてほしい」というメッセージを伝えたいといい、8日には母校の府立桜塚高(大阪府豊中市)で話す。
教師生活と講演への思い
清水さんは28歳で教師の道に進み、大阪や北海道の学校で勤めた。大学時代に落語にのめり込んだ経験から、話すことに自信があり、問題を抱えた生徒との対話に力を注いだという。
最初に赴任した大阪府内の定時制工業高校では、授業に遅れたり、けんかを繰り返したりする生徒に声をかけ続けた。最初は「うるさい」と言っていた生徒も、次第に悩みを語るようになった。
生徒の本音と向き合う
上司と対立して大阪を離れ、次に勤めた北海道・奥尻島の中学校では、生徒が口を開いてくれず悩んだという。心理学を学んで教育カウンセラーの資格を取得し、普段の様子に触れるなど、気にかけていることが分かるように話しかけると、「教室に行きたくない」「死にたい」と本音を漏らす生徒が現れた。否定せず、「何で?」と話を聞いた。
大阪に戻って教師生活を終えた今年4月、肺がんが見つかり、医師に「余命1年」と告げられた。死が迫っていると感じた時、思い浮かんだのは「思い詰めるからあかん」という自らの言葉だった。「死にたい」という生徒らを励ましてきたことを思い返し、自分を奮い立たせた。「絶対、前を向く」
講演で伝える「生きる力」
“口達者”の強みを生かし、生徒らに体験談を伝えたいと話すと、教え子や元同僚が講演の場を設けてくれた。タイトルは「生きる力」。余命宣告を受け、楽しく生きるコツは達成感や充実感だと感じたことを話した上で、頑張りすぎて心がつぶれないよう、「いいかげん」の大切さも伝える。その後、清水さんが頑張ったことや自分の好きなところを尋ね、生徒が答えると、拍手がわくという。
自己肯定感が低い子が多いと感じていたことがベースにあり、それぞれの自己肯定感を上げてもらうのが狙いだ。「息苦しい社会で楽しく生きる方法を見つけ、自分を信じられる人間になってほしい」との思いを込める。
講演では、以前の教え子たちが握手を求めて列をなし、充実感に満たされることもある。清水さんは「講演することで、自分も自己肯定感が上がっている。機会がある限り、思いを伝えたい」と話している。