8割超が50歳代以上「8050問題」 89歳母の遺体3か月放置で有罪
89歳母の遺体3か月放置 8050問題の孤立を問う

福島地裁は6月23日、福島市の50歳代女性に対し、母親(当時89歳)の遺体を自宅に約3か月間放置したとして、死体遺棄罪で拘禁刑1年、執行猶予3年(求刑・拘禁刑1年)の有罪判決を言い渡した。女性は法廷ですすり泣き、「成仏させられず、ごめん」と亡き母にわびた。

経済的不安と地域からの孤立

公判や近隣住民らへの取材で浮かび上がったのは、女性の経済的な不安定さと地域社会からの孤立だった。女性は短大卒業後、職を転々とし、20歳代から無職。母親との2人暮らしで、買い物などは母親に依存し、ひきこもり状態だったとみられる。近所の女性は「昔はあいさつを積極的にしていたが、2、3年前から外で見かけなくなった」と話す。

市によると、2025年7月から月1回、地域包括支援センターの職員が母親を見守りに訪れていた。女性の疾患やひきこもり状態も関係機関で共有していたが、女性から相談は寄せられず、高齢の母親への支援にとどまった。母親は昨年12月末に亡くなったが、自宅を訪れたセンター職員や地域住民に対し、女性は「母は元気です」などと説明。「最近お変わりないですか」という職員の声かけには「頼んでいない」と突き放した。

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困窮と健康不安の実態

女性は経済的に困窮し、健康面にも不安を抱えていた。母親が亡くなった後の生活費は、財布に残ったわずかな金と母のタンス預金90万円ほど。公判では「葬儀代に大きな金がかかり、払ってしまえば生活ができなくなる」と話していたことが明らかになった。

さらに、統合失調症による幻覚・幻聴の症状があったほか、歩行も難しく通院や買い物にも行くことができなかった。地域から孤立し、「近所にも嫌われていると思い、誰にも言えずつらかった」と振り返った。3月、自宅を訪れたセンター職員らが一部が白骨化した母親の遺体を見つけた。「ちゃんと葬式をあげてあげればよかったと後悔した」と被告人質問で答えた女性は、判決言い渡し直前、「皆様に大変な迷惑をかけて申し訳ない」と消え入りそうな声で謝罪した。

相談の長期化と支援の課題

ひきこもりの相談支援や居場所作りなどを行う県ひきこもり相談支援センターによると、25年度の相談件数は1047件で、240世帯から相談があった。うち214世帯が10歳代~40歳代で、50歳代以上の相談は全体の8%に相当する20世帯だった。センター長の桜井龍太郎さん(34)は「ひきこもりが長期化すると相談するエネルギーを失い、諦めてしまう場合もある」と説明する。

自身もひきこもりの経験があるNPO法人「こおりやま子ども若者ネットワーク」理事の荻野亮太さん(40)は「(母が亡くなる前に)自治体職員や支援団体で何回も顔を合わせている人がいたら、女性から伝えるハードルは下がったかもしれない」と話す。

「8050問題」について研究している文京学院大人間学部の山崎幸子教授(老年心理学)は「ひきこもり人口は高齢化していく。家族の孤立や生活上の困難、経済的な困窮は増えていくだろう」と指摘する。当事者や関係者への支援には、経済的に困窮している場合は仕事や住まい、家計の立て直しを手助けする「生活困窮者自立支援制度」や生活保護の利用を挙げる。健康状態に問題がある場合は、医療機関や障害福祉につなぎ、必要に応じて訪問看護やリハビリを利用することも勧める。

山崎教授は「当事者が援助要請の声を上げやすくするための情報発信が必要」と強調。8050問題が持つ複合的な課題への対応については「世帯全体を見て、医療や介護、生活困窮、ひきこもり支援などをつなぐ調整役の存在が重要になる」と話す。

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