熊本県八代市で、創業100年を超えるみそ蔵「丸屋商店」が熊本地震で被災し、製造を休止した。廃業も視野に入る窮地に、2020年の九州豪雨から復興した老舗のしょうゆ蔵「岩永醬油」が支援の手を差し伸べた。地区の名物を作るみそ蔵は、なじみ客の応援にも背中を押され、再建に向けて前を向いている。
外壁全て倒壊、製造完全停止
八代市日奈久地区で伝統の「ヒナグみそ」を製造する「丸屋商店」の丸木果歩里さん(39)は、被災当時を振り返り、「外壁が全て倒れて、外が丸見えだった。土ぼこりがひどくて、衛生管理もままならなかった」と話した。
丸屋商店は1914年(大正3年)創業の老舗で、5代目となる夫の浩嵩さん(38)が代表を務める。果歩里さんは2019年に結婚し、6年前から店で働いている。八代市出身で、学校の給食などで日常的にヒナグみそに触れてきた。熊本市内で就職するなど八代を離れたものの、買ったみそが合わず、古里のみそが恋しくて帰省時に購入し続けていた。「親しんできたみそのことを学べるワクワク感を持って働いてきた」という。
店は、2016年の熊本地震や2020年の九州豪雨などでは大きな被害はなかったが、今回の地震では工場の外壁が全て倒壊。麹を造るための「室(むろ)」に土ぼこりが入り、大豆をゆでるための機械も壊れ、製造は完全にストップした。約300キロの麹と約600キロの大豆もだめになり、「被害の大きさに立ち尽くした」と話す。
廃業の危機、妻の強い思い
工場内の修繕には多額の費用が見込まれる。店は親戚1人を含めた従業員6人の家族経営で、廃業も念頭に話し合いが行われた。ただ、幼少期からヒナグみそに愛着があった果歩里さんには強い思いがあった。「私はお客さんの気持ちも分かる立場。ここがなくなったら、おいしいみそが食べられないという人は必ずいる。何とか立ち上がらんといかんでしょ」
地震後、大阪や北海道など、全国各地のなじみの客から多くの連絡があった。「いつまでも待つから再建してください」「ヒナグみそで育ったからこの味じゃないといけない」といった応援の声ばかり。果歩里さんは「再建したい」と声を上げた。
豪雨被災の恩返し、製造代行支援
そんな中、同業者の組合を通じて親交があった「岩永醬油」(熊本県芦北町)代表の岩永幸三さん(57)が救いの手を差し伸べた。地震後に断水したために訪ねた温泉でたまたま会った際に被災状況を伝えて相談すると、地震の前に仕込んでいたみその製造を代行し、腐った大豆と麦の廃棄も担ってくれた。



