刑事事件で任意の取り調べを受ける人に対し、弁護士が取調室の外で待機して助言する「準立ち会い」が各地で広がっている。日本弁護士連合会(日弁連)は2024年度に援助制度を設け、福岡県弁護士会や沖縄弁護士会なども経済的支援や研修を通じて取り組みを後押ししている。
取調室の外での助言が不当な調書を防ぐ
福岡県内のある警察署で、飲酒運転で逮捕された30歳代の女性が釈放後に任意の取り調べを受けた際、容疑は認めたものの飲酒量を正確に覚えていなかった。しかし取調官から「(検知したアルコールの)計算式からこれくらい飲んだことになる」などと言われ、供述調書に飲酒量が記入された。取調室の外で待機していた弁護士が女性から相談を受け、「話していないことは記載できないですよ」と取調官に抗議。酒量の記載は削除され、女性はその後、不起訴処分となった。
この警察署の幹部は取材に対し、「個別の事案に答えられないが、証拠に基づいた適正な取り調べを行っている」としている。弁護士は「容疑者は動揺する中で事実をうまく説明できないことがあり、誤った内容で罪が重くなることを避けたい」と話す。
日弁連が援助制度を新設、実施報告は約140件
日弁連は、米国や英国、韓国などで認められている弁護士が取り調べに同席する「立ち会い」の実現を目指している。ただ、これまで少年や精神障害者ら一部を除き、捜査機関側が認めた例はほとんどない。国内では立ち会いの可否を明確に定めた法律はなく、捜査機関側には真相解明に支障を来すとの懸念があるためだ。
そこで広がっているのが準立ち会いだ。取調室外の廊下などで弁護士が待機し、取り調べの休憩時に内容を聞き取り、対応を助言する。日弁連「取調べ立会い実現委員会」の川崎拓也事務局長によると、準立ち会いは2018年頃から増え始め、2022年12月から今年6月までに約140件の実施報告があった。実施した弁護士からは「不安が和らいだ」「取調官の対応が良くなった」などの感想が寄せられている。
日弁連は取り組みを進めるため、2024年度に援助制度を設けた。国選弁護事件などを対象に、準立ち会いを行った場合には1万5000円、立ち会いの書面による申し出には3000円を支援する。川崎事務局長は「弁護士の立ち会いは国際的には権利として確立している。援助制度をきっかけに取り組みが広がれば」と語る。
各地の弁護士会も支援や研修を実施
各地の弁護士会も、立ち会いや準立ち会いの実現に向けた動きを活発化させている。福岡県弁護士会は2023年に立ち会いの制度化を目指すプロジェクトチーム(PT)を発足させ、日弁連の支援制度に上乗せする形で準立ち会いをした場合に2万円を支援するなどしている。沖縄弁護士会は日弁連から講師を招くなどして研修を実施し、宮崎や大分の各弁護士会でも研修を通じて取り組みを推奨している。
ただ、数時間に及ぶこともある取り調べに対応する負担は重く、取り組む弁護士は一部に限られている側面もある。沖縄弁護士会の金高望会長は「準立ち会いを求めて捜査側と対話することで、取り調べ時間の短縮にもつながっている。丁寧に意義を説明していきたい」と話し、福岡県弁護士会のPT座長を務める古賀祥多弁護士は「取り組みを進め、取り調べのあり方自体にも問題提起していきたい」と語った。



