福岡県議会で金銭授受疑惑が発覚して以降、初の定例会が9日開会した。服部誠太郎知事は8日、県庁講堂で幹部職員約180人を前に約30分にわたりメッセージを読み上げ、「過度な働きかけや配慮を行う『根回し』は必要ない。県民の見える場で正面から議論する」と述べ、従来の議会との関係見直しを強調した。
知事「あしき慣行と決別を」
服部氏は冒頭、自身が県職員出身であることを踏まえ、「もっと早く、踏み込んで変えるべきだった」と振り返り、「大きな負担と苦労をかけた。極めて重く受け止めている」と陳謝。その上で「あしき慣行と決別し、県議会との関係を本来あるべき姿にしなければならない」と呼びかけた。
一連の疑惑は6月定例会閉会の約2週間後、吉松源昭議員が議長就任前の金銭支払いを証言したことで発覚。8月17日の臨時会で蔵内勇夫前議長の議長職辞職勧告決議案は採決中止となったが、蔵内氏は議員辞職に追い込まれた。
答弁の事前打ち合わせを最小限に
これまで執行部と議会の間では、答弁の内容を事前に「てにをは」まで念入りに打ち合わせる慣行があったが、9月定例会からは質問の趣旨確認を行った上で、答弁の骨子をメールで1回だけ議員側に伝える最小限の運用に改める。
「県議会のドン」とされた蔵内氏の退場について、ある県幹部は「蔵内氏が了承すれば反論が起こりにくく、スムーズに議会運営が進んでいた側面もある」としつつ、「衝突が起きる可能性もあるが、これが本来の議会のあり方だろう」と話す。
早くもその兆しは出ている。服部氏が開会日に提案を予定する、議員らの不当要求から職員を守る条例案を巡り、議会側が「説明不足だ」などと反発。2日の議事日程は大幅に遅れた。板橋聡副議長は「今までのように、しゃんしゃんで進む議会ではなくなった」と述べており、議案審議が予定通り進むかは不透明だ。
議長選で非自民候補擁立の動き
県議会では自民の「指定席」だった議長を巡り、「非自民」候補の擁立を目指す異例の動きが出ている。議長は最大会派・自民県議団が所属議員の中から候補者を出し、他会派が追認するのが慣例で、昨年4月の議長選では蔵内氏が85票中82票を集めた。
今回、自民県議団(38人)は正副議長経験のない大島道人議員を擁立する。8月下旬に自民を離脱した神崎聡議員は8日、民主系会派から分裂した「県政PLUS県議団」(10人)と「県民の声ふくおか」(8人)の代表者と意見交換し、立候補を表明している公明党県議団(10人)の新開昌彦団長を統一候補として一本化すべきだと主張。新政会(6人)も新開氏を推す方針で、結束できれば自民の対抗馬になりうる。
神崎氏は「金銭授受疑惑や高額な海外視察の問題もある中、自民から議長を出すべきではない」と述べた。県民の声の原田博史代表も「県民の信用が失墜しており、新しい県議会としてスタートしなければならない」としたが、民主系会派で意見がまとまらず、結論は持ち越された。
一方、自民県議団の渡辺勝将会長は「最大会派、責任会派として(現状を)ただしていかなければならない。疑惑に関わっていない人が厳しく改革すべきだ」と述べ、議長選の投票には拘束をかけないという。
自主解散のハードル
県内の地方議会では県議会の自主解散に言及した決議の可決が相次いでいるが、実現のハードルは高い。地方議会の自主解散の要件を定めた特例法によると、議員の4分の3以上が出席し、そのうち5分の4以上が同意しなければならない。現在の県議会の議員数は85人で、64人以上が出席した上で少なくとも52人、全議員が出席した場合は68人以上の同意が必要となる。
来年4月の任期満了前の自主解散について、中堅議員は「腹をくくって選挙で信を問うしかない」と理解を示す一方、ある若手議員は「解散しても何の解決にもならない。疑惑の真相解明が先」と否定的だ。全国都道府県議会議長会によると、都道府県議会での自主解散は1965年の東京、66年の茨城の2例がある。いずれも贈収賄事件などが問題となり、世論の高まりを受けて提案、可決されたという。
大正大の江藤俊昭教授(地方自治)は「今議会は、これまで以上に注目される。議会と行政が些細なことでぶつかっていると自分たちのことしか考えていないとみられ、更なる不信を招く。双方が一連の問題の検証を進め、県民の納得する改革の方向性を示すなど、早急な対応が求められる」と指摘している。



