中古車販売大手ビッグモーターを巡る保険金不正請求事件で、警視庁は11月29日、同社の元社長兼田和正容疑者(65)ら3人を詐欺容疑で逮捕した。逮捕されたのは、兼田元社長のほか、同社の元役員2人。警視庁は、同社が組織的に保険金を不正に請求していた可能性が高いとみて、捜査を進めている。
不正の手口と疑惑の発覚
警視庁によると、兼田元社長らは2021年9月、同社の店舗で修理のために預かった顧客の車両のバンパーを故意に損傷させ、あたかも事故が発生したように装って保険金を請求した疑いが持たれている。具体的には、従業員が車両を壁などにぶつけて傷をつけ、その修理費用を保険会社に請求していたという。この手口は「自演事故」とも呼ばれ、同社の複数の店舗で常態化していた可能性が指摘されている。
疑惑は2022年に内部告発によって表面化した。ビッグモーターの元従業員が、同社が保険金を不正に請求しているとして、警視庁に告発状を提出。その後、警視庁は任意の事情聴取などを行い、捜査を進めてきた。今年7月には、同社の複数の店舗に家宅捜索が入り、関係先から押収した資料を分析していた。
被害総額と影響
警視庁は、ビッグモーターによる保険金不正請求の被害総額が数十億円に上る可能性があるとみている。これまでに、同社の店舗で修理を依頼した顧客のうち、少なくとも1000件以上のケースで不正な保険金請求が行われていたことが確認されている。保険会社各社は、不正請求に基づいて支払った保険金の返還を求める方針で、ビッグモーターは民事上の責任も問われる可能性がある。
この事件を受け、ビッグモーターの経営は大きな打撃を受けている。同社は今年9月、東京地裁に民事再生法の適用を申請し、経営破綻した。負債総額は約1000億円に上るとされ、多くの従業員が解雇されるなど、地域経済にも影響が及んでいる。
捜査の今後の展開
警視庁は、兼田元社長ら逮捕者の認否を明らかにしていないが、関係者によると、兼田元社長は容疑を否認しているという。警視庁は今後、他の幹部や従業員の関与についても捜査を拡大する方針で、同社の組織的な不正の全容解明を目指す。
また、この事件は、中古車業界全体の信頼を揺るがす事態となっており、国土交通省は業界団体に対して再発防止策の徹底を求める通知を出すなど、対応に追われている。ビッグモーターの不正は、保険金詐欺という犯罪行為にとどまらず、顧客の信頼を損ない、業界全体の風評被害にもつながっている。
警視庁は、今後も関係先の捜査を続け、不正の実態を解明するとともに、同様の不正が他社でも行われていないか、広く調査していく考えだ。



