東京大学の休学者がこの10年で1.6倍に増加している。背景には、名門校の生徒に特有の精神的なプレッシャーがあるという。一般財団法人ドラゴン桜財団代表理事で『ドラゴン桜2』編集担当の西岡壱誠氏は、精神的な理由で休学を余儀なくされる学生が増えていると指摘する。
東大休学者の増加と精神的な要因
東大の休学者数は年々増加傾向にあり、2013年から2023年の間に約1.6倍に拡大した。休学理由として「経済的な理由」を挙げる学生も多いが、西岡氏は「はっきり言ってしまえば、精神科から適応障害やうつ病の認定を受け、休学を余儀なくされた友達も、片手では足りないくらいいます」と述べる。経済的な問題の根本には精神的な要因が潜んでいるケースが多いという。
名門校の生徒は、一般の生徒と比較して不安障害・うつ病・薬物乱用のリスクが2~6倍高いことが複数の研究で示されている。西岡氏は、この傾向を「東大うつ」と呼び、その背景には幼少期からの「全勝」体験があると分析する。
「全勝」体験がもたらす強迫観念
首都圏模試センター(現・ONETES)の調査によれば、2023年の首都圏における私立・国立中学の受験者数は推定約5万2600人で、受験率は17.86%と過去最高を記録した。およそ5~6人に1人が中学受験を経験している計算だ。西岡氏は、こうした受験戦線を「全勝」で駆け抜けた生徒の事例を紹介する。
「全勝」という体験は、その後の人生のものさしを決めてしまう。一度すべての試合に勝つと、人は次の試合でも勝てるはずだと考えるようになる。そして「勝てて当たり前」という前提が、いつの間にか「勝てなければおかしい」という強迫観念へと変わる。この重圧が、名門校の生徒のメンタルヘルスを蝕む要因となっている。
西岡氏は「誇らしい属性がメンタルヘルス上のリスク要因になる」と警鐘を鳴らす。東大や有名私立校といった「勝ち組」のレッテルが、かえって生徒を追い詰めるケースが少なくない。
求められる支援と対策
こうした状況を受け、大学や教育機関ではメンタルヘルス支援の強化が急務となっている。東大でもカウンセリングサービスの拡充や、休学中の学生に対するサポートプログラムを充実させているが、根本的な解決には至っていない。
西岡氏は「勝つことだけが全てではないという価値観を、社会全体で共有する必要がある」と提言する。特に、幼少期から「全勝」を強いられる受験競争のあり方そのものを見直すべきだと訴える。



