東京大学の休学者数がこの10年間で約1.6倍に増加し、2024年5月時点で415人に達した。学部生に限っても、2022年5月時点で386人と2009年比で約85%増えている(東大公表値、朝日新聞EduAなど)。こうした現状を背景に、自身も2浪で東大に合格し、6月に新刊『東大うつ』を上梓した西岡壱誠氏(一般財団法人ドラゴン桜財団代表理事)が、東大生が心を病む理由を解説する。
「東大に入ればバラ色」の幻想と現実
「東大に入ったら、人生はバラ色に違いない」――受験生だった頃、西岡氏自身もそう信じていた。日本の学歴の頂点に位置し、合格者数が全国ニュースになる東大。生涯年収も他大学より高く、就職でも有利で、グローバルエリートが期待される。しかし実際に入学すると、そのイメージとは異なる現実が見えてくる。
西岡氏自身は東大生活を楽しみ、東大生を集めて会社を起業するほどだったが、周囲には精神的に不調を抱えたり、突然連絡が取れなくなったりする友人が少なくなかったという。この感覚は個人的なものにとどまらず、データが裏付けている。
“全勝”体験が強迫観念に変わるメカニズム
名門校の生徒は、幼少期から「勝ち続ける」体験を積んできた。しかし、その体験が強迫観念に姿を変え、不安障害やうつ病、薬物乱用のリスクが一般の生徒に比べて2~6倍高いという研究結果もある。西岡氏は、東大生が「次のレース」が永遠に続くトンネルに迷い込み、心を病むケースが多いと指摘する。
「東大に入っても、次の目標(就職、研究、起業など)が待っている。休むことが許されない感覚に陥りやすい」と西岡氏は語る。この現象は日本だけのものではなく、世界的に見られる傾向だ。
東大生がうつになる理由
東大生は入学後、周囲に自分より優秀な人が多い環境に晒される。それまでトップだった学生が「平均的」になることで、自己効力感が損なわれる。また、失敗を許されない完璧主義が強く、休学や退学を選択せざるを得ないケースが増えている。
西岡氏は「東大は確かに特別な場所だが、そこで無理をしすぎると心が壊れる。自分のペースを守ることが大切だ」と警鐘を鳴らす。休学者数の増加は、東大だけでなく日本のエリート教育全体が抱える課題を浮き彫りにしている。



