肝臓外科医の尾形哲氏は、脂肪肝と診断された場合でも、肝臓の脂肪は体内で最も早く減少しやすい部位であると指摘する。しかし、放置すれば肝硬変や肝がんへ進行するリスクがあり、早期の対策が不可欠だ。尾形氏は、筋肉を「第2の肝臓」と呼び、筋肉量の維持が肝臓の代謝機能を支える鍵だと強調する。
筋肉は「第2の肝臓」:代謝を支える重要な組織
筋肉は単に体を動かすだけでなく、エネルギー消費を促進し、余剰エネルギーが脂肪として蓄積されるのを防ぐ。さらに、肝機能が低下した際には、筋肉がアンモニアの代謝を補助する役割を果たす。アンモニア処理は本来肝臓の主要な機能だが、筋肉もその代謝経路に関与するため、肝臓を保護する上で筋肉の維持が重要となる。
尾形氏は「筋肉は糖やエネルギーの代謝を支える『第2の肝臓』とも言える存在」と述べ、減量中は体重減少だけでなく、筋肉量を維持できているかを意識する必要があると注意を促す。そのための具体的な方法として、高タンパクで筋肉維持に最適な食材である鶏むね肉を、1食あたり100グラム程度摂取する習慣を推奨している。
1日1分から始める筋肉アップ体操
筋肉量を増やすには食事だけでなく運動も重要だが、尾形氏は激しい運動やジム通いの必要はなく、部屋でできる1分程度の簡単な体操から始めることを提案する。具体的には「イスで立ち座り」と「フラミンゴポーズ」の2つを紹介している。
「イスで立ち座り」は、腕を胸の前で組み、イスに腰かけて立ち上がる動作を繰り返すもので、太ももやお尻といった大きな筋肉を効率的に刺激できる。もう一方の「フラミンゴポーズ」は、イスの背に手を添え、片脚を浮かせた状態で30秒キープする運動で、左右それぞれ行う。運動が苦手な人でも取り組みやすい。
特に食後に軽く体を動かすと、血液中の糖が筋肉に取り込まれやすくなり、食後血糖値の急上昇を抑える効果が期待できる。また、筋肉を動かすことでマイオカインの分泌が促進される。マイオカインは筋肉が分泌するホルモン様物質で、肝臓に働きかけて糖の供給を調整し、脂肪組織に働きかけて脂肪分解を促進するなど、代謝全体を底上げする作用があることが分かっている。
長時間のデスクワークが多い人は、仕事の合間に1分だけ立ち上がってこれらの体操を習慣化するとよいと尾形氏はアドバイスしている。
脂肪肝をチェックするポイント
脂肪肝は自覚症状が乏しいため、定期的な健康診断での血液検査や腹部超音波検査が重要となる。特にALTやγ-GTPなどの肝機能マーカーが高値の場合、脂肪肝の可能性が疑われる。また、内臓脂肪型肥満、糖尿病、脂質異常症、高血圧などのメタボリックシンドローム関連疾患を持つ人は脂肪肝のリスクが高い。早期発見と生活習慣の改善が肝臓の健康を守る鍵であり、尾形氏の提唱する鶏むね肉の摂取と1分体操は、手軽に始められる有効な対策と言える。



